『うた魂』
『スウィングガールズ』と『歓喜の歌』を掛け合わせて『フラガール』の二匹目のドジョウを狙ったような企画。だけれども、脚本は雑、演出もアマチュア。アマチュアっぽいところが良いと仰る御仁もおられようが、身銭を切る側としてはそれではコマリマス。
音楽映画なのに少しもスウィングしないところが致命的だけれど、その他にもいくつか問題点が・・・・。
たとえば、産休の代用教員である薬師丸ひろ子の挿話が本筋に巧く絡んでいない。たとえば『フラガール』の場合、はじめまったくやる気がなかった都落ちのダンス教師が生徒の熱意にほだされて徐々に本気になるところがドラマの核心になっていたのだが。
次に、ヤンキースタイルが問題になってコンクール出場停止になりそうになった湯の川学院高校合唱部が土壇場で舞台に立つが、絶体絶命のピンチは、そのプロセスをきちんと描いてはじめて映画的なクライマックスになり得るのに、出番まで残りわずか数十分という時間の中でどうやって衣裳を替えたのか、肝心の細部がまるで描かれていない。これはまったく拍子抜け。「省略」は使い方次第で非常に面白い効果を生むが、本作は逆に面白くなる部分を完全にすっ飛ばしている。呆然。
もうひとつ。せっかくゲスト出演しているゴスペラーズが本編で歌っていない。エンドタイトルで歌声は流れるが、出演しているのだから是非とも本編中で歌ってもらうべき。それが音楽エンターテインメント映画の常識、王道、約束、決まりごと、なのだ。監督さん、音楽映画の百本も見て、今一度監督業の修行でもなさったらいかが?
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