2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『プラネット・テラー in グラインドハウス』

下品で俗悪、荒唐無稽で趣味の悪い低予算ホラー&スプラッター映画を模して、監督のロバート・ロドリゲスが観客そっちのけで大いに楽しんでいる、の巻。 根底に流れているのは、トビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』や『悪魔の沼』、『遊星からの物体X』を…

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』

映画の場合、監督のセンスとか才能とかいうものは、案外最初の数分、場合によっては数カットを見ただけであらかた判ってしまうものらしい。 本作の場合、農道にいた猫が姿を消したと思ったらダンプのブレーキ音が響き渡った瞬間の俯瞰ショット、二本の太い血…

『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』

黒澤明の『用心棒』、そのパクリであるセルジオ・レオーネの『荒野の用心棒』など、マカロニ・ウエスタンのテイストをベースに、サム・ライミの『クイック&デッド』やジョン・ヒューストンの『ロイ・ビーン』、サム・ペキンパーの『ワイルド・バンチ』あた…

『デス・プルーフ in グラインドハウス』

名画座がビデオに取って代わられた八十年代の初め頃までは、随分下品でいかがわしい低予算のプログラム・ピクチャーがどこの映画館にも掛かっていたものだ。その頃の観客の主力は男子学生や中年の労務者風のオッサンたちで、彼らが映画に求めていたものはも…

『火垂るの墓』

意識的に長年見ることを避け続けてきた作品。きっと打ちのめされるに違いないとわかっていたから。地上波で放送されたのを機に、ついに見てしまった。やはり予感は的中した。 『火垂るの墓』は、“悲しい”などという通り一遍の言葉では表せない、厳粛で、崇高…

『あるスキャンダルの覚え書き』

退職が迫った老女教師の、若き美人教師への友情、憧憬、はたまた同性愛ともつかない微妙な感情の襞を描くコワ〜い作品。三十年前頃の日活ロマンポルノによくありそうな題材。けれども、あっけらかんとしたコメディ調になったであろうロマンポルノとは違って…

『アヒルと鴨のコインロッカー』

東京近郊から大学に入学するために東北・仙台にやってきた青年(千葉県出身で東北大学の学生だった原作者がモデル?)が、風変わりなアパートの隣人に書店強盗を持ちかけられる、という意外な発端から始まるこの映画。盗んだつもりの広辞苑が何と広辞林だっ…

『街のあかり』

己の表現力の未熟さを露呈しているとしか思えない冗長な作品が横行する昨今、上映時間七十八分という短さが潔い『街のあかり』。 マフィアの情婦に騙された孤独な男、彼を思い続ける屋台の女、路上の少年と哀れな犬という、いつかどこかで見た安手の犯罪映画…

ベルイマン逝く

“訃報”というにはあまりにタイミングを逸しているが、言及しないわけにはいかない大物の死。某紙報道では見出しに“黒澤明監督らと並ぶ巨匠”と書かれてあった(どうして黒澤明を引き合いに出すのか、理由がわからない。記者が、世界中で映画監督といえば、こ…

佐藤真監督、死す

記録映画作家で『阿賀に生きる』などで知られる佐藤真さんが亡くなった。 報道によると、佐藤さんは、昨年うつ病と診断されて以来入退院を繰り返していたが、今月4日、転院の途中、付近の団地に突然駆け上がって階段の踊り場から飛び降りたのだという。49…