2008-01-01から1年間の記事一覧

『僕の彼女はサイボーグ』

映画を見るうえで長年ワタシのお師匠さん的存在だった双葉十三郎先生の採点方法で、見た映画を評価。 あくまでお遊びの精神です。 基準は双葉先生の『ぼくの採点表』にならって以下のとおり。 ☆ひとつはおよそ20点、★は5点前後といった感じで、だいたいの目…

『4ヶ月、3週と2日』

非合法の堕胎を扱った映画では、人助けと思って施術を行っていた夫人が主人公の『ヴェラ・ドレイク』が記憶に新しい。『4ヶ月、3週と2日』では『ヴェラ・ドレイク』とは反対に施術を受ける側の女子学生が主人公。露見すれば投獄されるチャウシェスク政権下の…

『最高の人生の見つけ方』

家族のためだけに生きてきた謹厳実直な修理工のモーガン・フリーマンと、何度も結婚に失敗し実の娘とも疎遠になっている大富豪のジャック・ニコルスンが、癌治療でたまたま同室に入院し、ともに余命わずかと宣告されるが、すっかり意気投合して、死ぬまでに…

『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』

六〇年安保闘争に始まり、一〇・二一新宿騒乱事件、東大安田講堂の攻防戦を経て、全共闘・新左翼系学生運動が四分五裂・離合集散の果てにあさま山荘事件へとなだれ込む経緯が、当時の記録映像と、赤軍派・革命左派両派の主要メンバーを簡潔に紹介するモンタ…

『うた魂』

『スウィングガールズ』と『歓喜の歌』を掛け合わせて『フラガール』の二匹目のドジョウを狙ったような企画。だけれども、脚本は雑、演出もアマチュア。アマチュアっぽいところが良いと仰る御仁もおられようが、身銭を切る側としてはそれではコマリマス。 音…

『スルース』

三十五年ほども前に見たジョゼフ・L・マンキーウィッツ監督の『探偵 スルース』にはまんまと一杯喰わされたことを覚えているけれども、推理ゲーム的な面白さに尽きる映画なので、二度目を見るかと訊かれたらたぶんNoと答える。したがって、リメイク作に期…

『胡同の理髪師』

めざましい経済発展で成金が増えたせいなのか、近年の中国映画にはどうも高慢ちきで傲慢な考え方をするものが多く、あまり好きになれないが、本作は年老いた理髪師と路地裏の住人たちの生活点描に枯れた味わいがあって、とても好感が持てる。貧しい年金生活…

『運命じゃない人』

たった一夜の間に起こった出来事を、複数の登場人物それぞれの視点から、時制を行きつ戻りつ語るという技巧的な作品でありながら、婚約者に裏切られた女性とお人好しの青年の出会いをなかなか情感豊かに描いた秀作。 手法としては、近年ではクエンティン・タ…

『ラスト、コーション 色戒』

アルフレッド・ヒッチコックの『汚名』で、ナチの残党とおぼしき秘密組織に潜伏した女スパイ(イングリッド・バーグマン)が、恋人のケーリー・グラントに、組織の首領格であるクロード・レインズから結婚を申し込まれたと打ち明ける場面があった。作戦を続…

『まぶだち』

最近の日本映画は学園モノがとても多い。脚本家、監督をはじめとした製作者側の社会人としての経験の乏しさ(学校と業界しか知らない?)ゆえか、あるいは日本には表現するに値する世界が学校以外に見当たらないのか、そのあたりはよく判らないが、日本映画…

『奈緒子』

『長距離ランナーの孤独』のトム・コートネイ、『フレンチ・コネクション2』のジーン・ハックマン、『卒業』のダスティン・ホフマン、はたまた『アントワーヌ・ドワネル』シリーズのジャン=ピエール・レオの例を挙げるまでもなく、走ることはきわめて映画…

『やわらかい手』

一九六八年、アラン・ドロンと共演した『あの胸にもう一度』で、黒のバイクスーツに身を包んでオートバイをぶっ飛ばしていた、あのマリアンヌ・フェイスフルが、六十過ぎのいいお婆ちゃんになって、しかも指先で男をイカせる風俗店ナンバーワンの売れっ子に扮…

『魔法にかけられて』

『白雪姫』をパロディにしたようなおとぎの国のお姫様が現代のニューヨークに現れて恋に落ちる、という着想が素晴らしいファンタジックなミュージカル・コメディ。 世間知らずの王女様(オードリー・ヘップバーン)が訪問先のローマで街に出てトンチンカンな…

『歓喜の歌』

明らかに『フラガール』の二匹目のドジョウを狙った企画。主婦のコーラスグループを主人公に据えた日常ドラマは、一見地味で意表をついた感じに思えるが、実は計算づく。 クレジットを読むと、首都圏のママさんコーラスが多数エキストラ出演しているけれども…

『エリザベス:ゴールデン・エイジ』

中世から近世にかけてのヨーロッパ、ことに英国を舞台にしたコスチューム・プレイは、サー・ローレンス・オリヴィエの諸傑作でさえ敬遠したくなるほど苦手なジャンル。しかし、これは面白かった。 カソリック信徒・スペイン国王フェリペ二世の英国への野心、…

『僕のピアノコンチェルト』

もし監督がフレディ・M・ムーラーでなければ見なかっただろう。それほど彼の旧作『山の焚火』は素晴らしかったのだが、この日本語題名では中味が全然伝わらない。危うく大事な一本を見落としてしまうところだった。近年の配給会社の付ける邦題には、見る意…

『犬と私の10の約束』

チャップリンの『犬の生活』や往年の大ヒット作『南極物語』を挙げるまでもなく、人と犬にまつわる作品はまことに多いが、近年日本映画では、企画不足か、はたまた癒しを求める時代の風潮か、このジャンルの映画が頻出。 昔から“動物と赤ん坊には勝てない”と…

『人のセックスを笑うな』

センス抜群だった『犬猫』で大いに気に入った井口奈巳監督。彼女の新作ということで期待していたのだけれど、ガックリ。 『突然炎のごとく』のジャンヌ・モローを思わせるような、つかみどころのない永作博美と、彼女に翻弄される初心な松山ケンイチ、それに…

『再会の街で』

ジェリー・シャッツバーグ監督、ジーン・ハックマンとアル・パチーノ主演の『スケアクロウ』を、9.11同時多発テロの後遺症に苦しむ現代のニューヨークに置き換えたかのような秀作。 『スケアクロウ』では、刑期を終えたハックマンと船乗りで何年も家を空けて…

『母べえ』

日本の周辺に、日本に敵対的姿勢をとる国があったとして、その国が日本に武力攻撃する準備を進めていると、仮に日本政府が主張したら、武力攻撃には武力で応える、つまり自衛のための交戦なら賛成だ、という世論が多数を占めるかもしれない。仮にそうなった…

『かあちゃん』

当地では公開されなかった旧作。今回日本映画専門チャンネルで放送されたのを初めて見た。 天保年間、江戸下町の長屋にドケチな一家が住んでいた。“かあちゃん”こと、おかつ(岸恵子)と三人の息子、それに娘の五人家族である。一家は毎月の月初めと十四日、…

ロイ・シャイダー逝く

ポリス・アクションの傑作『フレンチ・コネクション』では、臭いと睨んだら猪突猛進するポパイ刑事の相棒として冷静沈着に行動する刑事を、スティーヴン・スピルバーグの出世作『ジョーズ』ではリチャード・ドレイファスやロバート・ショウとともに人喰い鮫を…

『小津の秋』

あまりに直截なタイトルで苦笑させられるけれども、藤村志保が小津の別荘であった無藝荘の管理人をやっていることと、彼女が昔思いを寄せた男と一緒に見た映画が『秋日和』であったということ以外、小津映画との直接的な関連はない。 蓼科映画祭も出てくるけ…

『SMILEスマイル聖夜の奇跡』

一度も試合に勝ったことがないアイスホッケーチームが、ダメ監督に率いられて最後には強豪チームに勝ってしまう展開が、往年のアメリカ映画『がんばれベアーズ』を思い起こさせて楽しい。 『ロッカーズ』に続きこれが二作目となる陣内孝則の演出は、オーバー…