2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『運命じゃない人』

たった一夜の間に起こった出来事を、複数の登場人物それぞれの視点から、時制を行きつ戻りつ語るという技巧的な作品でありながら、婚約者に裏切られた女性とお人好しの青年の出会いをなかなか情感豊かに描いた秀作。 手法としては、近年ではクエンティン・タ…

『ラスト、コーション 色戒』

アルフレッド・ヒッチコックの『汚名』で、ナチの残党とおぼしき秘密組織に潜伏した女スパイ(イングリッド・バーグマン)が、恋人のケーリー・グラントに、組織の首領格であるクロード・レインズから結婚を申し込まれたと打ち明ける場面があった。作戦を続…

『まぶだち』

最近の日本映画は学園モノがとても多い。脚本家、監督をはじめとした製作者側の社会人としての経験の乏しさ(学校と業界しか知らない?)ゆえか、あるいは日本には表現するに値する世界が学校以外に見当たらないのか、そのあたりはよく判らないが、日本映画…

『奈緒子』

『長距離ランナーの孤独』のトム・コートネイ、『フレンチ・コネクション2』のジーン・ハックマン、『卒業』のダスティン・ホフマン、はたまた『アントワーヌ・ドワネル』シリーズのジャン=ピエール・レオの例を挙げるまでもなく、走ることはきわめて映画…

『やわらかい手』

一九六八年、アラン・ドロンと共演した『あの胸にもう一度』で、黒のバイクスーツに身を包んでオートバイをぶっ飛ばしていた、あのマリアンヌ・フェイスフルが、六十過ぎのいいお婆ちゃんになって、しかも指先で男をイカせる風俗店ナンバーワンの売れっ子に扮…

『魔法にかけられて』

『白雪姫』をパロディにしたようなおとぎの国のお姫様が現代のニューヨークに現れて恋に落ちる、という着想が素晴らしいファンタジックなミュージカル・コメディ。 世間知らずの王女様(オードリー・ヘップバーン)が訪問先のローマで街に出てトンチンカンな…

『歓喜の歌』

明らかに『フラガール』の二匹目のドジョウを狙った企画。主婦のコーラスグループを主人公に据えた日常ドラマは、一見地味で意表をついた感じに思えるが、実は計算づく。 クレジットを読むと、首都圏のママさんコーラスが多数エキストラ出演しているけれども…

『エリザベス:ゴールデン・エイジ』

中世から近世にかけてのヨーロッパ、ことに英国を舞台にしたコスチューム・プレイは、サー・ローレンス・オリヴィエの諸傑作でさえ敬遠したくなるほど苦手なジャンル。しかし、これは面白かった。 カソリック信徒・スペイン国王フェリペ二世の英国への野心、…

『僕のピアノコンチェルト』

もし監督がフレディ・M・ムーラーでなければ見なかっただろう。それほど彼の旧作『山の焚火』は素晴らしかったのだが、この日本語題名では中味が全然伝わらない。危うく大事な一本を見落としてしまうところだった。近年の配給会社の付ける邦題には、見る意…