2006-01-01から1年間の記事一覧

印象に残った男優

今年の特徴は何と言っても外国映画で活躍した日本人男優が多いこと。『硫黄島からの手紙』の渡辺謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、中村獅童、『太陽』のイッセー尾形と佐野史郎、『単騎、千里を走る。』の高倉健など、そろって好演。ソル・ギョングは逆に日…

印象に残った女優

『ブラック・ダリア』『マッチポイント』『理想の女』のスカーレット・ヨハンソンばかりが目立っていたけれど、『ロスト・イン・トランスレーション』の彼女には遠く魅力が及ばない。売れっ子もいいけれど、あんまり安売りすると飽きられますヨ。 彼女よりも…

さて、外国映画篇。 今年は上位5本のうちなんと4本までが俳優出身の監督作品。クリント・イーストウッド、トミー・リー・ジョーンズ、それにジョージ・クルーニーの作品のどれもが実に堂々としていて素晴らしい。 十本の他には『力道山』『太陽』『カポー…

印象に残った男優

オダギリジョーは昨年に続き『ゆれる』『THE有頂天ホテル』『パビリオン山椒魚』などで大活躍。進境著しいのが『嫌われ松子の一生』『雪に願うこと』『ハチミツとクローバー』などの伊勢谷友介と『好きだ、』『ハチミツとクローバー』『花よりもなほ』などの…

印象に残った女優

『間宮兄弟』『シュガー&スパイス〜風味絶佳』『手紙』ほかの沢尻エリカ、『ハチミツとクローバー』『フラガール』『虹の女神』の蒼井優、同じく『虹の女神』『笑う大天使』『出口のない海』や当地では間もなく公開される『幸福のスイッチ』の上野樹里、『…

今年見た映画は102本(もちろん映画館)で、ここ数年ほぼ同じペース。見逃した作品もいくつかあったけれど、中年の勤め人にはこれが精一杯か。 デイヴィッド・クローネンバーグの『ヒストリー・オブ・バイオレンス』、マーティン・スコセッシの『ボブ・ディ…

『硫黄島からの手紙』

予告編やマスコミへの露出の仕方だけを見ていると、ついつい『硫黄島からの手紙』は渡辺謙演じる栗林中将が主役の映画と思い込んでしまう。たしかに予告編を見る限り、栗林中将は、硫黄島の戦いで米軍を想像以上に苦しめた日本軍の指揮官として、兵卒を大事…

『武士の一分』

藤沢周平の描く時代小説では、東北山形の小さな藩(海坂藩)で僅かの俸禄を食む下級武士が、やむにやまれぬ事情(その多くは藩命)から師匠伝来の秘剣を使わざるを得ない状況に立ち至り、あるいは妻を棄て家族を失うものの、やがてはもとの生活を取り戻す、…

『太陽』

天皇は、平安の末期に権力の座を滑り落ちて以来、南北朝時代など一時期を除いて政治史の表舞台からは消えた。伝統的文化の継承者という側面を持ちながらも、他の歴史上の英雄・豪傑・有名人たちに比べて映画や演劇・小説などの世界で題材になることがほとん…

『マッチポイント』

ジョージ・スティーヴンス監督の名作『陽のあたる場所』(五一年作品)とあまりに似ているので、そのリメイク、つまりシオドア・ドライサー原作の小説『アメリカの悲劇』の三度目の映画化だと思ったら、そうではなかった。 カンヌでの記者会見で『陽のあたる…

映画検定受検始末〜1級篇

アホらしいと思いつつも無視できない映画検定。映画好きの弱みにつけこんだキネ旬の商魂に反発を覚えながらも誘惑に抗うことはできず、昨日、1級の検定を受けてまいりました。 結果は、5ないし6問ほどあった難問以外はほぼ自信をもって解答。『七人の侍』…

ロバート・アルトマン逝く

ロバート・アルトマンが亡くなった。 ワタシにとっては、『ザ・プレイヤー』や『プレタポルテ』などより、何と言っても『ナッシュビル』の人。多彩な登場人物の中から暗殺未遂犯を浮かび上がらせる演出が実に鮮やかな群集劇だった(権利関係の問題か、初公開…

『記憶の棘』

ローレン・バコールをこんな風にしか使えないことが、まずいけない。 ニコール・キッドマンとのツー・ショットでバコールにピントを合わせていないとか、バコールが台詞をオフ(画面外)で喋るとか・・・・これでは、キャリア六十年のハンフリー・ボガート未亡人…

ベティ・コムデン逝く

ベティ・コムデンが亡くなった。 ベティ・コムデンといっても、お若い方にはピンとこないかもしれない。アドルフ・グリーンとのコンビで『踊る大紐育(On the Town)』『雨に唄えば』『いつも上天気』(以上ジーン・ケリーとスタンリー・ドーネン監督)や、ヴ…

もうひとつの『父親たちの星条旗』

『硫黄島の英雄』(デルバート・マン監督、61年作品)という映画がある。 この映画は見たことがない。そこで、双葉十三郎先生の『ぼくの採点表』から引用すると、次のように書いてある。 「・・・アイラとソレンソンは、スリバチ山にたどりつき、一休みしている…

『父親たちの星条旗』

『父親たちの星条旗』は、ほとんどモノクロームに近いレベルまで彩度を落とした硫黄島の戦闘場面、無理やり帰還させられた三人の兵士たちが戦時国債の広告塔として全米各地でキャンペーン活動をさせられる場面、そして三人の帰還兵のうちのひとりの息子が父…

『ブラック・ダリア』

『ブラック・ダリア』は、一九四〇年代から五〇年代にかけて主にハリウッドで製作された一群の犯罪映画(のちに“フィルム・ノワール”と呼ばれる)の世界を再現しようとする試み。 フィルム・ノワールの作品群は映画館で再映されることはほとんどないけれど、…

『16ブロック』

「帰り際に上司から仕事を言いつけられるとロクなことはない」というTVスポットに惹きつけられて見に行った。 当直明けで帰宅しようとしていた中年刑事・ブルース・ウィリスが、年下の上司から証人の護送を命じられる。行き先は16ブロック先の裁判所。お安…

『ハチミツとクローバー』

なんと清々しい青春映画なのだろう。二時間近くの間、実に気持ちよく過ごさせてもらった。 全編ほとんど事件らしい事件は何も起こらず、美大に通う五人の男女の恋のすれ違いを描くエピソード集といった趣で、この味わいはほぼ羽海野チカの原作どおりらしい(…

『フラガール』

昨今の日本映画の好調ぶりを示す一作。 松雪泰子扮するフラダンスのコーチは、ヤクザの寺島進に再三押しかけられ借金の返済を迫られている。どうやら彼女は借金から逃げるために仕方なく東北の炭鉱町にやってきたらしく、いわば都落ちの身。かつてSKDに所属…

『ゆれる』

『ゆれる』は、西川美和という、恐ろしく感覚の研ぎ澄まされた女性監督の子宮内で育まれ、産み落とされた驚嘆すべき傑作である。 山梨の山村で香川照之がガソリンスタンドを経営している。そこを手伝っているのが真木よう子。彼女はかつて、香川の弟で母の一…

『プルートで朝食を』

映画ファンなら、アイルランドといえばジョン・フォードの『静かなる男』。スティーヴン・スピルバーグが『E.T.』に引用し、クリント・イーストウッドが『ミリオンダラー・ベイビー』でオマージュを捧げた作品。映画人に最も愛された“映画の中の映画”の一本…

『胡同のひまわり』

中国が改革開放政策で飛躍的な経済成長を遂げて以来、一定の制約があるものの中国映画は表現の幅を徐々に広げ、扱う題材も随分多彩になってきた。その結果、中国映画は世界の中でも重要な地位を占め、アン・リーのように渡米してアカデミー監督賞を取るよう…

『グエムル 漢江の怪物』

あの『殺人の追憶』のポン・ジュノ監督の第三作。『殺人の追憶』で田舎者の刑事を演じたソン・ガンホがちょっと愚鈍な主人公で再登場。同作で限りなく“クロ”に近い容疑者を演じたパク・ヘイル、『リンダリンダリンダ』で昨年一番のお気に入り女優になったペ…

『ローズ・イン・タイドランド』

『ブラザーズ・グリム』で資本に妥協したテリー・ギリアムが、奔放自在に描くワンダーランド。ただし、かなりえげつない描写もあって、食生活の違うワタシとしては少々辟易した部分も。“通”を自認する方はどうぞ、といった映画。ジェフ・ブリッジスの役者根…

『スーパーマンリターンズ』

上質の恋愛映画として楽しめる。スーパーマンがロイス・レインと宙に漂う場面など、実にうっとりさせられる。スーパーマン役のブランドン・ラウスはまったく違和感なし。冒頭のタイトル場面も見もの。

『喜劇・女は男のふるさとヨ』

初期の『男はつらいよ』シリーズを思わせるパワフルな作品。それもそのはず、監督の森崎東はスタート当初の『男はつらいよ』シリーズの脚本家でもあった。車寅次郎の破壊的なキャラクターの造形は、森崎東のものであったといわれる。主役のストリッパー・倍…

『ニッポン無責任時代』

クレージー・キャッツの本領は、一に舞台、二がテレビで、映画は三番目と言われる(小林信彦氏)。ワタシは舞台を見たことがない(舞台の録画は見たことがある)ので断言はできないが、映画よりテレビの方が断然面白いのは確か。クレージー(植木等)主演映…

『笑う大天使』

トシのせいか映画館で居眠りすることも最近多い。『スウィングガールズ』『亀は意外と速く泳ぐ』ですっかりお気に入りの上野樹里嬢を見に行った本作は、近頃では最も爆睡できた一本。批判ではなく、真夏の暑い午後、空調の効いた映画館で昼寝するのも、考え…

『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』

事故で死にかけた須賀健太少年(相変わらず達者な演技を見せる)が、幽霊の少女によってこの世に引き戻されるという設定が、終戦直後のイギリス映画『天国への階段』をちょっと思い起こさせるファンタジー。篠原涼子が『THE有頂天ホテル』に続いて母親役を好…