2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々』

「今にあなたがここに立つわ」。 ゾフィー・ショルは、反ヒトラーを喧伝するビラを大学構内に撒いた罪で実兄らとともに逮捕、拘束される。彼らはゲシュタポによる取調べの後、法廷で裁きを受けることになるが、裁判は法的に適正な手続きを踏むと見せかける茶…

『イノセント・ボイス 12歳の戦場』

本作の脚本家であるオスカー・トレスは、実際に十四歳のとき戦火のエルサルバドルを脱出して単身アメリカに渡り、その後俳優をめざしながら自身の経験と記憶を一本の脚本にまとめあげた。それがこの『イノセント・ボイス 12歳の戦場』のもとになったシナリオ…

『好きだ、』

九月の頃なのだろうか、いくらか湿気を含んだような風が吹き抜ける土手の向こう、低い山並みを薄い雲がゆっくりと流れてゆく。主役の女子高生・ユウ(宮崎あおい)と同級生のヨースケ(瑛太)は、放課後に土手でよく一緒に過ごす。ヨースケはいつも下手なギ…

『ホテル・ルワンダ』

ルワンダの民族紛争に関しては、一時期のジャーナリズムによるセンセーショナルな報道を覚えていたので、映画を見る前は、正直なところ少々気が重かった。「この事実を見よ」的なメッセージ映画や、論文や社説で書いてもらった方が良いような映画はどうも好…

『三年身籠る』

タイトルどおり、主人公の中島知子が三年間身ごもる映画。 三年間も胎児が出産せず母体の中にとどまり続けるというのは、ある意味ホラー映画のようでもあり、コメディ映画のようでもあり、ファンタジー映画のようでもある。とにかく不思議な味わいの映画。 …

『タイフーン』

二十年間生き別れになっていた姉(イ・ミヨン)と弟(チャン・ドンゴン)が再会する場面が泣かせる。 脱北のさなか北朝鮮に家族を皆殺しにされ、かろうじて生き残ったイ・ミヨンとチャン・ドンゴンの姉弟。しかし逃亡の果てにふたりは生き別れとなり、姉は娼…

『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』

トミー・リー・ジョーンズ監督作品『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』は豊穣な映画的記憶に満ちた作品である。 サム・ペキンパーの『ガルシアの首』を想起させる点がそこかしこで話題になっているけれど、テキサスとメキシコ国境のあたりを舞台にし…