2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』

一九五〇年代生まれの世代をターゲットにした『なごり雪』に対して、こちらは六〇年代〜七〇年代生まれを意識した、姉妹篇ともいうべき作品。 『なごり雪』同様、伊勢正三の名作フォークをモチーフに、エンコー(援助交際)やバブル崩壊、就職超氷河期の世相…

『殯の森』

たとえば黒澤明の『羅生門』。野盗の三船敏郎が森雅之演じる武士を襲撃し彼の妻・京マチ子を強姦する場面が森の中。ギラギラ乱反射する木漏れ日が、三船と京の激しい欲望を表して強烈なインパクトだった。 また、イングマール・ベルイマンの『処女の泉』。や…

『サウスバウンド』

妻子を持ちトシも取ってくると、たいがいの男は若い頃に抱いていた志や理想を棄て、適当に世間と折り合いを付けながら人生の妥結点を見出していく。ところが本作の主人公、娘曰く「元過激派でアナーキスト」、実はただのいいトシをした無職のオッサンにすぎ…

『陸に上った軍艦』

太平洋戦争に従軍し生き残った兵士たちも今やそのほとんどがすでに八十歳以上。 戦争を回顧する番組や新聞の特集記事は夏の定番、というか風物詩にさえなっているのだけれども、近年は、高齢化した生存者たちの証言を拾い集めようとする傾向が顕著。特に『硫…

『らくがき黒板』

日本映画専門チャンネルで連続放映中の新藤兼人監督、昭和三十四年の作品。 広島県三原市。晴れた朝の通学風景。大勢の小学生たちが元気に町を駆けていく。その中に、あちこち落書きしては走り去る男の子のグループ。家の塀、地蔵の顔、トラックのドア・・・・ど…

『原爆の子』

日本映画専門チャンネルがHD化されたのを機に加入。ちょうど連続放映中の新藤兼人監督作品を取り上げることにした。昭和二十七年作品。 瀬戸内海の島で教師をやっている乙羽信子が、久しぶりで夏休みを利用して故郷の広島に帰る。彼女は、原爆で灰燼に帰し…