2005-01-01から1年間の記事一覧

①チャーリーとチョコレート工場 ②ミリオンダラー・ベイビー ③キング・コング ④ビヨンド the シー ⑤四月の雪 ⑥大統領の理髪師 ⑦ヴェラ・ドレイク ⑧マラソン ⑨マルチュク青春通り ⑩宇宙戦争 11ライトニング・イン・ア・ボトル 八分の短編『岸辺のふたり』は他…

①いつか読書する日 ②タッチ ③理由 ④カーテンコール ⑤パッチギ! ⑥帰郷 ⑦犬猫 ⑧ニライカナイからの手紙 ⑨ニワトリはハダシだ ⑩ALWAYS 三丁目の夕日 11リンダリンダリンダ 『いつか読書する日』に弱点がないではない。けれど魅力的な映画。 『タッチ』をこの位…

05年を振り返る(その4)〜外国映画*女優篇

『ミリオンダラー・ベイビー』でハングリーな女ボクサーを演じたヒラリー・スワンク、そのヒラリー・スワンクに「彼女が(アカデミー賞を)取るべきだった」と言わしめた『ヴェラ・ドレイク』のイメルダ・スタウントン。ともに印象に残る名演技。 このふたり…

05年を振り返る(その3)〜外国映画*男優篇

『ビヨンドtheシー』でボビー・ダーリンを吹き替えなしで歌いまくり監督までやってのけたケヴィン・スペイシーも凄いけれど、『チャーリーとチョコレート工場』のジョニー・デップは、自閉症気味で子供っぽい成金の億万長者、ウィリー・ウォンカ役に実によく…

05年を振り返る(その2)〜日本映画*男優篇

今、最も旬な男優といえばオダギリジョー。05年には『パッチギ!』『メゾン・ド・ヒミコ』『イン・ザ・プール』『オペレッタ狸御殿』『スクラップ・ヘブン』『忍 SHINOBI』など出演作が立て続けに公開された。去年の『血と骨』、その前の『アカルイミライ…

05年を振り返る(その1)〜日本映画*女優篇

今年も残りあとわずか。 映画で一年を振り返ることは、映画好きに与えられたささやかな楽しみのひとつ。 一回目の今夜は、日本映画の女優篇。 衆目の一致するところ05年は田中裕子の年。『いつか読書する日』『火火』の二本で各賞の主演女優賞総なめは間違…

『二十四の瞳』

夕食を済ませてテレビを点けたら、ちょうど『二十四の瞳』を放送中だった。三分の二をすでに過ぎたあたりだったのでチャンネルを変えようと思ったが、ついつい引き込まれて最後まで見てしまった。再見は三十数年ぶりのこと。 瀬戸内海が眺望できる料理旅館の…

『カーテンコール』

団塊の世代(昭和二十二年から二十四年生まれ)が就職や進学のために故郷を離れていったのは昭和四十年代のはじめ頃から半ば頃にかけて。テレビ受像機が大半の家庭に普及して映画館から観客の足がすっかり遠のいてしまったこの時期、若者の多くが都会をめざ…

脚本家・鈴木尚之さん逝く

脚本家の鈴木尚之さんが亡くなった。 東映の企画本部在籍中に内田吐夢監督の抜擢で『宮本武蔵』の脚本に参加。『宮本武蔵』全五部作のほか、同監督の代表作のひとつ『飢餓海峡』や加藤泰監督の『沓掛時次郎・遊侠一匹』などを書いた。 内田吐夢と最晩年を共…

『ALWAYS 三丁目の夕日』

VFXの成果と美術の素晴らしさに目を瞠った。『スパイ・ゾルゲ』と比べても格段の進歩。 上野駅の場面など、群集の動きに多少の不自然さが残っているものの、旧駅舎の外観など、驚くべき精巧さ。今にも笠智衆と東山千栄子の老夫婦が現れそうなほど。 青森から…

『時代劇ここにあり』をめぐって川本三郎さんを研究する

川本三郎さんが時代劇について語るのは意外な感じがする。しかし『時代劇ここにあり』(平凡社)は、まぎれもなく川本さん一流のマイナー志向、美学が徹底していて実に面白い。 繁栄する都会よりも鄙びた寒村、大通りではなく路地裏、勝利者より敗残者、颯爽…

『マルチュク青春通り』

『マルチュク青春通り』は一九七八年、軍事政権下の韓国が舞台。翌年の七九年には当時の大統領パク・チョンヒが暗殺される事件が起こった。この事件は、大統領専任の理髪師をソン・ガンホが演じる『大統領の理髪師』でも描かれていた。 その『大統領の理髪師…

『四月の雪』

同じ自動車に乗り合わせていた男女が交通事故で重傷を負う。知らせを受けた男の妻(ソン・イェジン)と女の夫(ペ・ヨンジュン)が病院に駆けつけるが、男女の持ち物(携帯電話など)からふたりはお互いの配偶者同士が不倫関係にあったことを知る。病院前の…

『ヴェラ・ドレイク』

映画のキャスティングはとても大事だと思う。キャスティングが映画の成否を握ると断言する監督も少なくない。たとえば、バーテンダーならこういう顔、この俳優というイメージがあらかじめ観客の側にあって、演じる俳優がそのイメージに合わないと、どんなに…

どうする? 『タッチ』

あだち充の『タッチ』は、まずTV版アニメを見て、その後原作コミックもすべて読んだ。マンガをあまり読まないワタシとしては異例中の異例で、いったいどこが気に入ったのか、今となってははっきり思い出せないけれど、特に印象に残っているのは、台詞の少…

『ウィスキー』

記念写真に収まる際の合言葉、日本では“チーズ”(『寅さん』シリーズではご存知“バター”ですね)と言うところを、ウルグアイでは“ウィスキー”と言うらしい。映画は見知らぬ遠い異国の面白い風習や文化を教えてくれる。ウルグアイ映画としては日本初公開との…

日誌で話題にした映画

『マーサの幸せレシピ』『キッド』『長屋紳士録』『ペーパー・ムーン』『グロリア』『レオン』『グース』『戦場のピアニスト』『反撥』『赤い航路』『死と処女』『ローズマリーの赤ちゃん』『テナント/恐怖を借りた男』『チャイナタウン』『裏窓』『酔っぱ…

いらっしゃいませ。本日から公開です。

はじめまして。茂木昇と申します。 本日只今から“進富座映画日誌”を公開させていただきます。 ここ十年ほどの間に映画館を取り巻く状況はすっかり変わりました。シネマ・コンプレックスの浸透によって観客動員が徐々に回復する一方で、地方の街角から映画館…

中北千枝子さん逝く

新聞の見出しには“黒澤映画に出演”とあったが、むしろ成瀬巳喜男作品の名脇役として忘れられない存在。 成瀬監督は、貧乏暮らしが染みついてだらしがないというか、生活臭の抜けないシケた中年女性の役柄を好んで中北さんに演らせている。たとえば、『めし』…

『いつか読書する日』

最近の日本映画のひとつの傾向として、大袈裟な身振りや怒号、感情を露わにする表現が昔ほどではなくなってきたように思う。進富座上映作品では、たとえば『さゞなみ』『船を降りたら彼女の島』『犬猫』や『帰郷』など、登場人物は決して泣き叫んだり怒鳴っ…

『ニライカナイからの手紙』

上田秋成の原作を映画化した『雨月物語』には、出奔したまま行方知れずになった亭主の帰りを待ちわびながら、亡霊となってわが子を見守る母が描かれていた。『ニライカナイからの手紙』の母は、この『雨月物語』の田中絹代が演じた母を思い起こさせる。わが…

『帰郷』

小さな小さなロードムービー。後味がとても爽やかで、映画館を出る頃にはささやかな幸福感に満たされる。 東京から帰郷した晴男は、八年ぶりに初体験の相手・深雪と再会する。彼女には七歳になる娘・チハルがいる。「あなたに目元がそっくり」。そう言い残し…

『さよなら、さよならハリウッド』

一本一本が勝負のハイリスクな映画製作の世界で、ほぼ毎年一作のペースでコンスタントに撮り続けるウディ・アレンの存在は貴重。彼の映画を見ていると、行きつけの店の定位置に腰掛けたときのような安堵感を覚えてしまう。馴染みの空気にお決まりの味、そし…

『恋は五・七・五!』

『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』との類似性を指摘する声があるけれど、これはむしろ『シコふんじゃった。』の俳句版。 統廃合(廃部)の危機に瀕した高校(相撲部)が、俳句(相撲)の大会で強豪校(大学)を倒して優勝するという展開がまず…

『コーヒー&シガレッツ』

世間が煙草に対して今ほど不寛容ではなかった頃、煙草はクールでタフな男のダンディズムを演出する映画的小道具として多用されていた。四十年代の映画に出てくるハンフリー・ボガートやエドワード・G・ロビンスン、七十年代のジャック・ニコルスンなど、煙…

フランセス・ラングフォード逝く

フランセス・ラングフォードといっても、ちょっと一般の方には馴染みがない。ご存じの方はよほどベテランの映画ファンか、ポピュラー音楽通。 歌手で女優。『グレン・ミラー物語』の終盤、巨大な爆撃機の格納庫の場面で、欧州戦線従軍中のグレン・ミラー楽団…

『パッチギ!』

偶然本屋で見つけた『パッチギ! 対談篇』を読んだ。とても面白かった。 著者はシネカノン代表の李鳳宇(リ・ボンウ)さんと評論家の四方田犬彦氏。ふたりがそれぞれの生い立ちから青春時代を語り合う対談形式の本で、映画の話題は意外にも少ない。 ご存じの…

『ミリオンダラー・ベイビー』

尊敬する映画評論家のひとり、森卓也氏は本作を評して「もしマギーが男なら、ガンさばきを習う若者という西部劇のルーティン通り。」と書いていた。卓見である。が、ワタシが思い出していたのは、西部劇でもボクシング映画でもない、『イースター・パレード…

『ミリオンダラー・ベイビー』

カソリック教徒でゲール語を理解する大柄の男、フランキー(クリント・イーストウッド)がアイルランド系移民の子孫に違いないことは、容易に察しがつく。 そのフランキーがいつも暗誦しているイエーツの詩の中に、イニスフリーという地名が出てくる。イニス…

『岸辺のふたり』

台詞も字幕もない、わずか八分およそ百カットだけで、人生に起こることのすべてを映し出していた。 父との別れ、成長、友だち、恋、家族、思い出、老い、そして彼岸での父との再会。 自転車の車輪の反復繰り返しによって、幼い少女が老婆になるまでの長い長…