2007-01-01から1年間の記事一覧

外国映画篇。 ①グッド・シェパード ②ロッキー・ザ・ファイナル ③デス・プルーフ in グラインドハウス ④街のあかり ⑤エディット・ピアフ 愛の賛歌 ⑥ドリームガールズ ⑦今宵、フィッツジェラルド劇場で ⑧ブラッド・ダイヤモンド ⑨善き人のためのソナタ ⑩プラネ…

日本映画篇。 ①それでもボクはやってない ②怪談 ③腑抜けども、悲しみの愛を見せろ ④サウスバウンド ⑤サイドカーに犬 ⑥市川崑物語 ⑦松ケ根乱射事件 ⑧しゃべれどもしゃべれども ⑨SMILEスマイル聖夜の奇跡 ⑩めがね 年頭に見た『それでもボクはやってない』がダ…

『椿三十郎』

ないものねだりをしても仕方がないが、織田裕二に三船敏郎の豪胆さはやはり表現できない。また、殺陣場面もヨリ(接写)が多いためにアクションが全体的に窮屈な感じ。つまりダイナミックさにいささか欠ける。ただし日本映画史上に名高い最後の対決場面は、…

煙突はどこへ?

三重県伊勢市にある旧制宇治山田中学(現宇治山田高校)跡地。ここに、ついこのあいだまで一本の古い煙突が建っていた。この煙突は、映画監督小津安二郎が宇治山田中学在学中に寄宿していた寮の一部で、当時の建造物の中では唯一現存する遺構だったのだ。し…

『めがね』

スローライフ、スローフードを絵に描いたような映画。 小林聡美が沖縄の孤島(ロケは与論島)にやって来て、商売っ気がまるでないペンションらしき宿で数日を過ごす。ここのオーナーの光石研、毎年決まった時期にやって来るというもたいまさこ、地元に居つい…

『サラリーマン忠臣蔵』

忠臣蔵を高度経済成長期のサラリーマンものに翻案した、東宝“社長シリーズ”の一篇。赤穂物産の若社長を池辺良、彼を死に追いやり赤穂物産を牛耳る銀行家・吉良に東野英治郎、吉良に復讐する赤穂物産専務に森繁久弥という布陣。 主君(社長)に忠誠を誓う家臣…

『なつかしの顔』

映画法によるシナリオの事前検閲やフィルムの配給制など戦時下の厳しい情勢の中で製作されながらも、成瀬巳喜男の演出家としての才能が光る秀作。 昭和十六年のある農村。模型飛行機遊びに興じる少年たち。その中に本作の主人公である弘二。彼の家は兄が出征…

『エディット・ピアフ 愛の賛歌』

人気歌手の伝記映画の難しさは、たとえば『グレン・ミラー物語』『ベニイ・グッドマン物語』『愛情物語』『バード』など音楽家のそれと違って、一般的に主人公の顔が広く知られているゆえに、よほどのソックリさんでないと観客が違和感を持ちやすいという点…

『ブレイブ ワン』

行きずりの犯罪で恋人を失った女性が犯人たちに復讐するという基本構成が、コーネル・ウールリッチ(ウィリアム・アイリッシュ)の原作をフランソワ・トリュフォーが映画化した『黒衣の花嫁』と同じ。 ただし、加害者を探し出しては次々と色々な手段で殺害し…

『インベージョン』

ジャック・フィニー原作『盗まれた街』の四度目の映画化。 最初の映画化作品であるドン・シーゲル監督の『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』は、SF映画史上の傑作と伝えられるが残念ながら未見のまま。過去三作のうちワタシが見ているのは二作目『SF/ボ…

『グッド・シェパード』

CIAの諜報員マット・デイモンのもとに一通のブラック・メールが送られてくる。封書の中に収められた録音テープと一枚の写真。それがいったい何を意味するのか、調査が進められるにつれ、徐々に明らかにされていく悲劇の火種。その経過が実にサスペンスフ…

『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』

一九五〇年代生まれの世代をターゲットにした『なごり雪』に対して、こちらは六〇年代〜七〇年代生まれを意識した、姉妹篇ともいうべき作品。 『なごり雪』同様、伊勢正三の名作フォークをモチーフに、エンコー(援助交際)やバブル崩壊、就職超氷河期の世相…

『殯の森』

たとえば黒澤明の『羅生門』。野盗の三船敏郎が森雅之演じる武士を襲撃し彼の妻・京マチ子を強姦する場面が森の中。ギラギラ乱反射する木漏れ日が、三船と京の激しい欲望を表して強烈なインパクトだった。 また、イングマール・ベルイマンの『処女の泉』。や…

『サウスバウンド』

妻子を持ちトシも取ってくると、たいがいの男は若い頃に抱いていた志や理想を棄て、適当に世間と折り合いを付けながら人生の妥結点を見出していく。ところが本作の主人公、娘曰く「元過激派でアナーキスト」、実はただのいいトシをした無職のオッサンにすぎ…

『陸に上った軍艦』

太平洋戦争に従軍し生き残った兵士たちも今やそのほとんどがすでに八十歳以上。 戦争を回顧する番組や新聞の特集記事は夏の定番、というか風物詩にさえなっているのだけれども、近年は、高齢化した生存者たちの証言を拾い集めようとする傾向が顕著。特に『硫…

『らくがき黒板』

日本映画専門チャンネルで連続放映中の新藤兼人監督、昭和三十四年の作品。 広島県三原市。晴れた朝の通学風景。大勢の小学生たちが元気に町を駆けていく。その中に、あちこち落書きしては走り去る男の子のグループ。家の塀、地蔵の顔、トラックのドア・・・・ど…

『原爆の子』

日本映画専門チャンネルがHD化されたのを機に加入。ちょうど連続放映中の新藤兼人監督作品を取り上げることにした。昭和二十七年作品。 瀬戸内海の島で教師をやっている乙羽信子が、久しぶりで夏休みを利用して故郷の広島に帰る。彼女は、原爆で灰燼に帰し…

『プラネット・テラー in グラインドハウス』

下品で俗悪、荒唐無稽で趣味の悪い低予算ホラー&スプラッター映画を模して、監督のロバート・ロドリゲスが観客そっちのけで大いに楽しんでいる、の巻。 根底に流れているのは、トビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』や『悪魔の沼』、『遊星からの物体X』を…

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』

映画の場合、監督のセンスとか才能とかいうものは、案外最初の数分、場合によっては数カットを見ただけであらかた判ってしまうものらしい。 本作の場合、農道にいた猫が姿を消したと思ったらダンプのブレーキ音が響き渡った瞬間の俯瞰ショット、二本の太い血…

『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』

黒澤明の『用心棒』、そのパクリであるセルジオ・レオーネの『荒野の用心棒』など、マカロニ・ウエスタンのテイストをベースに、サム・ライミの『クイック&デッド』やジョン・ヒューストンの『ロイ・ビーン』、サム・ペキンパーの『ワイルド・バンチ』あた…

『デス・プルーフ in グラインドハウス』

名画座がビデオに取って代わられた八十年代の初め頃までは、随分下品でいかがわしい低予算のプログラム・ピクチャーがどこの映画館にも掛かっていたものだ。その頃の観客の主力は男子学生や中年の労務者風のオッサンたちで、彼らが映画に求めていたものはも…

『火垂るの墓』

意識的に長年見ることを避け続けてきた作品。きっと打ちのめされるに違いないとわかっていたから。地上波で放送されたのを機に、ついに見てしまった。やはり予感は的中した。 『火垂るの墓』は、“悲しい”などという通り一遍の言葉では表せない、厳粛で、崇高…

『あるスキャンダルの覚え書き』

退職が迫った老女教師の、若き美人教師への友情、憧憬、はたまた同性愛ともつかない微妙な感情の襞を描くコワ〜い作品。三十年前頃の日活ロマンポルノによくありそうな題材。けれども、あっけらかんとしたコメディ調になったであろうロマンポルノとは違って…

『アヒルと鴨のコインロッカー』

東京近郊から大学に入学するために東北・仙台にやってきた青年(千葉県出身で東北大学の学生だった原作者がモデル?)が、風変わりなアパートの隣人に書店強盗を持ちかけられる、という意外な発端から始まるこの映画。盗んだつもりの広辞苑が何と広辞林だっ…

『街のあかり』

己の表現力の未熟さを露呈しているとしか思えない冗長な作品が横行する昨今、上映時間七十八分という短さが潔い『街のあかり』。 マフィアの情婦に騙された孤独な男、彼を思い続ける屋台の女、路上の少年と哀れな犬という、いつかどこかで見た安手の犯罪映画…

ベルイマン逝く

“訃報”というにはあまりにタイミングを逸しているが、言及しないわけにはいかない大物の死。某紙報道では見出しに“黒澤明監督らと並ぶ巨匠”と書かれてあった(どうして黒澤明を引き合いに出すのか、理由がわからない。記者が、世界中で映画監督といえば、こ…

佐藤真監督、死す

記録映画作家で『阿賀に生きる』などで知られる佐藤真さんが亡くなった。 報道によると、佐藤さんは、昨年うつ病と診断されて以来入退院を繰り返していたが、今月4日、転院の途中、付近の団地に突然駆け上がって階段の踊り場から飛び降りたのだという。49…

『恋しくて』

ド素人をかき集めた高校生のアマチュア・バンドのお話といえば『リンダリンダリンダ』。もっと古くまでさかのぼれば『青春デンデケデケデケ』というケッサクもある。牛のウンコを踏んづける映画なら『遥かなる山の呼び声』や『下妻物語』。オナラの映画なら…

『オール・ザ・キングスメン』

"All the King's Men"という映画の存在を初めて知ったのはもう四十年近くも前のこと。確か当時邦題は『すべて王の家来』と直訳されていたけれども、実在の政治家をモデルにしたロバート・P・ウォーレンのピューリッツァ賞受賞小説の最初の映画化であるこの作…

『パッチギ!LOVE&PEACE』

済州島を脱出して南方の戦場をくぐりぬけ、やがて日本にたどりつく在日一世の物語と、アンソンとキョンジャの一家が東京で暮らしている1974年の物語を交互に描く『パッチギ!LOVE&PEACE』は、まるで井筒和幸監督の『ゴッドファーザーPART2』ではないかと思…