2003-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『さゞなみ』

『さゞなみ』には、小津映画の痕跡がいくつも見て取れる。 母と娘の物語が『秋日和』を思わせることはアチコチに書かれているようだから、それ以外の細部を拾っていくと・・・・ まず、母娘が旅先の川原で撮った記念写真。小津の映画で記念写真が撮られると…

『さゞなみ』

華奢な体躯、か細い声。内省的で口数の少ない娘(唯野未歩子)の、繊細で、それでいて希薄ではない存在感が圧倒的に素晴らしい。 映画『さゞなみ』は、山形県のある市役所で水質検査技師として働く彼女の、禁欲的でつつましく、規則正しい日々を丹念に描いて…

『麦秋』

一家の老父(菅井一郎)が小鳥の餌を買いに家を出る。踏切の前まで来ると遮断機が下り、老父は道端に腰を降ろす。電車が通り過ぎる。遮断機があがる。老父は腰掛けたまま吐息をつき、空を見る。彼の顔には笑みが浮かんでいる。 『麦秋』の終盤に現れる謎めい…