『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』

六〇年安保闘争に始まり、一〇・二一新宿騒乱事件、東大安田講堂の攻防戦を経て、全共闘新左翼学生運動が四分五裂・離合集散の果てにあさま山荘事件へとなだれ込む経緯が、当時の記録映像と、赤軍派・革命左派両派の主要メンバーを簡潔に紹介するモンタージュとともに提示される導入部から『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』は一気に核心へと突き進む。
一度は逃亡しながら運動に復帰した赤軍派森恒夫が、自らの負い目や後ろめたさを払拭するため、かつて高邁な志を共有し合った同志たちを取るに足らぬ理由によって執拗に査問し、狡猾で嫉妬深く猜疑心の強い革命左派・永田洋子と主導権争いを演じるかと思えば一転共闘して、不倶戴天の仇敵に対するよりも激しい憎しみをもって仲間たちにリンチを加えてゆく場面は、凄惨をきわめる。
しかしながら『実録・連合赤軍』の本当に凄いところは、怒号と威嚇そして恐怖による支配と服従という、悲惨な光景の連続が、まるで深作欣二の『仁義なき戦い』を思わせるダイナミックなエンターテインメントになっている点。誤解を恐れずに申せば、そのめったやたらな面白さには正直興奮を禁じえなかった。三時間余りの長丁場は瞬く間に過ぎ、一瞬たりとも緊張が緩むことはなかった。
尤も、あさま山荘事件の直後に製作された『仁義なき戦い』自体、戦後間もない頃のやくざ間の抗争を描いているとはいえ、所詮時代と切り結ぶことを宿命付けられる映画のことゆえ、全共闘運動の敗北の影を色濃く落としているのは否定できないし、両作に通底する混沌とした負のエネルギーは、ある意味双生児のようにも感じられる。
森恒夫ら首謀者の、あさま山荘以後がテロップで紹介される最後に至って、時代の潮流に屹立し押し潰されていった幾多の青春に思いを馳せ、深い諦観と悲しみの念を禁じえなかった。

仁義なき戦い [DVD]

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