05年を振り返る(その4)〜外国映画*女優篇

ミリオンダラー・ベイビー』でハングリーな女ボクサーを演じたヒラリー・スワンク、そのヒラリー・スワンクに「彼女が(アカデミー賞を)取るべきだった」と言わしめた『ヴェラ・ドレイク』のイメルダ・スタウントン。ともに印象に残る名演技。
このふたりを凌ぐ巧さで唸らせたのは『四月の雪』『私の頭の中の消しゴム』のソン・イェジン。前者では、ペ・ヨンジュンと許されない恋に落ちる人妻、後者では若年性痴呆症が徐々に進行し恋人の顔さえ識別できなくなってゆく若い女性役を、緩急自在の演技で見せた。これからどんな女優になってゆくのだろう。楽しみ。
私の頭の中の消しゴム』が若年性痴呆症なら、『きみに読む物語』のジーナ・ローランズ老人性痴呆症。夫の顔も夫との若き日の恋も記憶の彼方に消えてしまう老女を貫禄で演じていた。
以上がそれぞれ演技賞に値する演技派女優たち。ところが映画の世界には、舞台と違って演技の巧拙を超えた強烈な印象を残す女優がたくさんいる。今年はさしずめナオミ・ワッツ
キング・コング』の彼女は、オープニングを除いて最後まで台詞がほとんどなく、絶叫芝居に終始する。が、コングが手放そうとせず結果的には彼女のために命を棄てることになってしまうことを納得させる魅力に溢れたヒロインである。『ロード・オブ・ザ・リング』三部作のスタッフが再結集して製作された鳴り物入りの大作で、怪獣映画の大物キャラクターに対抗するのは並大抵ではない。ナオミ・ワッツはその大役を果たした。作品もディーノ・デ・ラウレンティス製作の七十六年版などより遙かに面白く、オリジナル版への愛情と敬意も忘れていないところが素晴らしい。
その他で印象に残ったのは、これも絶叫芝居のダコタ・ファニング(『宇宙戦争』)、『マルチュク青春通り』のマドンナ役の新人ハン・ガイン、『ウィスキー』で無表情な工員を演じたミレージャ・パスクアル、『アビエイター』でキャサリン・ヘップバーンを演じアカデミー賞を受賞したケイト・ブランシェットなど。『奥さまは魔女』のニコール・キッドマンはオリジナルのエリザベス・モンゴメリーのキュートさに遙かに及ばなかった。
イ・ヨンエは、『親切なクムジャさん』がまだ当地で公開されていない(TV『宮廷女官チャングムの誓い』ブームのおかげで年明けには見られる)ので何とも言えない。『宮廷女官チャングムの誓い』を見る限り、イ・ヨンエも少しトシをとって別の色気が出てきた(『JSA』の頃も捨てがたいが・・・・)ように思う。