和田誠さんの『シネマ今昔問答・望郷篇』を読む

和田誠さんの『シネマ今昔問答・望郷篇』(新書館)がめちゃくちゃ面白い。一昨年に出た『シネマ今昔問答』のいわば続篇で、和田さんが初めて見た映画のことや、総天然色映画、3D映画、初監督作品である『麻雀放浪記』、それに『快盗ルビイ』『真夜中まで』などの撮影にまつわるエピソードを語ってくれる。撮影の裏話は特に本書の白眉ともいえる箇所で、一気に読ませる。
和田さんの文章は平易で読みやすく、かつとても面白い。映画について書くことを生業としない和田さんは、いつまでも熱心な一映画ファンとして、面白かった映画のことを友達と気楽に語るような語り口で書いてくれる。映画館からの帰り道、あの場面がよかったね、とか、あのスターがよかったね、とか語り合った経験は誰しも持っている。和田さんの本は、まさにあの感覚である。
話題のジャンルは西部劇、ミュージカル、音楽映画、SF、海賊映画、伝記映画など幅広く、決して観念的、抽象的なテーマやメッセージには流れない。語り口はあくまで具体的。
ろくに古典を見もしない最近の評論家(映画ライター)諸氏は、この本を読んで勉強しなさいと言いたい。

シネマ今昔問答・望郷篇

シネマ今昔問答・望郷篇

シネマ今昔問答

シネマ今昔問答