『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』
一九五〇年代生まれの世代をターゲットにした『なごり雪』に対して、こちらは六〇年代〜七〇年代生まれを意識した、姉妹篇ともいうべき作品。
『なごり雪』同様、伊勢正三の名作フォークをモチーフに、エンコー(援助交際)やバブル崩壊、就職超氷河期の世相を反映した勝ち組・負け組み(ニート)の図式も登場する。
『なごり雪』では、美しい日本語の響きを大切に、台詞はきわめて明瞭に発音されていたが、本作では逆に、筧利夫はじめ登場人物は皆ボソボソと力なく喋る。不景気、モラルの崩壊、元気を失った地方の町・・・・時代を反映してか、『22才の別れ』の雰囲気はめっぽう暗い。
大林宣彦監督は、編集技術などプロフェショナルな腕前は依然達者なのだけれども、ほぼ同時期に公開された『転校生』のリメイク版同様、残念なことに彼もさすがに衰えたと思った。何より主人公のコンビニ店員の少女(鈴木聖奈)と彼女の亡き母親役の二人の表情が暗く、作品を引っ張るパワーも魅力もないのが致命的に痛い。
セメント工場が長年石灰岩を掘削したことによって風景の荒廃した大分県津久見と、その隣町で、企業誘致による発展を頑なに拒み続けた臼杵の町の古風な風景の対比は、図式的だが、この国がこの五十年の間に何を失ってきたのか、考えさせてくれる映像である。
それにしても臼杵の町並みはとても美しい。『なごり雪』ですっかり惚れてしまった臼杵の町のために★ひとつオマケ。
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日日世は好日2001―五風十雨日記〈巻の1〉同時多発テロと『なごり雪』 (大林宣彦ブック 2)
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