☆☆☆★

『僕の彼女はサイボーグ』

映画を見るうえで長年ワタシのお師匠さん的存在だった双葉十三郎先生の採点方法で、見た映画を評価。 あくまでお遊びの精神です。 基準は双葉先生の『ぼくの採点表』にならって以下のとおり。 ☆ひとつはおよそ20点、★は5点前後といった感じで、だいたいの目…

『魔法にかけられて』

『白雪姫』をパロディにしたようなおとぎの国のお姫様が現代のニューヨークに現れて恋に落ちる、という着想が素晴らしいファンタジックなミュージカル・コメディ。 世間知らずの王女様(オードリー・ヘップバーン)が訪問先のローマで街に出てトンチンカンな…

『小津の秋』

あまりに直截なタイトルで苦笑させられるけれども、藤村志保が小津の別荘であった無藝荘の管理人をやっていることと、彼女が昔思いを寄せた男と一緒に見た映画が『秋日和』であったということ以外、小津映画との直接的な関連はない。 蓼科映画祭も出てくるけ…

『インベージョン』

ジャック・フィニー原作『盗まれた街』の四度目の映画化。 最初の映画化作品であるドン・シーゲル監督の『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』は、SF映画史上の傑作と伝えられるが残念ながら未見のまま。過去三作のうちワタシが見ているのは二作目『SF/ボ…

『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』

一九五〇年代生まれの世代をターゲットにした『なごり雪』に対して、こちらは六〇年代〜七〇年代生まれを意識した、姉妹篇ともいうべき作品。 『なごり雪』同様、伊勢正三の名作フォークをモチーフに、エンコー(援助交際)やバブル崩壊、就職超氷河期の世相…

『殯の森』

たとえば黒澤明の『羅生門』。野盗の三船敏郎が森雅之演じる武士を襲撃し彼の妻・京マチ子を強姦する場面が森の中。ギラギラ乱反射する木漏れ日が、三船と京の激しい欲望を表して強烈なインパクトだった。 また、イングマール・ベルイマンの『処女の泉』。や…

『恋しくて』

ド素人をかき集めた高校生のアマチュア・バンドのお話といえば『リンダリンダリンダ』。もっと古くまでさかのぼれば『青春デンデケデケデケ』というケッサクもある。牛のウンコを踏んづける映画なら『遥かなる山の呼び声』や『下妻物語』。オナラの映画なら…

『パッチギ!LOVE&PEACE』

済州島を脱出して南方の戦場をくぐりぬけ、やがて日本にたどりつく在日一世の物語と、アンソンとキョンジャの一家が東京で暮らしている1974年の物語を交互に描く『パッチギ!LOVE&PEACE』は、まるで井筒和幸監督の『ゴッドファーザーPART2』ではないかと思…

『百年恋歌』

東京を舞台にした日本映画『珈琲時光』で往年の調子を取り戻したかにみえた侯孝賢(ホウ・シャオシエン)だけれども、『百年恋歌』では彼の良い面とそうでない面が同時に出た。 三部構成になっているオムニバスの第一話『恋愛の夢』では、兵役を目前にひかえ…

『酒井家のしあわせ』

監督の呉美保は、タイトルは忘れたけれど何かの映画で記録係をやっていた。 記録、つまりスクリプトの仕事は撮影されたショットの一切を記録すること。たとえば今撮影中のショットに出ている俳優がどんな衣装を着ていて、カット尻では手足の位置がどこにあっ…

『ブラック・ダリア』

『ブラック・ダリア』は、一九四〇年代から五〇年代にかけて主にハリウッドで製作された一群の犯罪映画(のちに“フィルム・ノワール”と呼ばれる)の世界を再現しようとする試み。 フィルム・ノワールの作品群は映画館で再映されることはほとんどないけれど、…

『ローズ・イン・タイドランド』

『ブラザーズ・グリム』で資本に妥協したテリー・ギリアムが、奔放自在に描くワンダーランド。ただし、かなりえげつない描写もあって、食生活の違うワタシとしては少々辟易した部分も。“通”を自認する方はどうぞ、といった映画。ジェフ・ブリッジスの役者根…

『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』

事故で死にかけた須賀健太少年(相変わらず達者な演技を見せる)が、幽霊の少女によってこの世に引き戻されるという設定が、終戦直後のイギリス映画『天国への階段』をちょっと思い起こさせるファンタジー。篠原涼子が『THE有頂天ホテル』に続いて母親役を好…

『ラフ』

昨今の日本映画の好調ぶりをうかがわせる映画。こういう何でもないアイドル映画がさりげなくコンスタントに出てくるようになれば、日本映画界も強いと思う。日本映画の伝統的な強さは、構えがそれほど大げさでない、いわば番線映画的な作品の中にある。かく…

『佐賀のがばいばあちゃん』

ヒットしている。四月下旬に13スクリーンでスタート。地元の九州で火がついて、六月上旬時点で74スクリーンにまで拡大されているらしい(キネ旬“BOX OFFICE REPORT”)。ワタシが見に出かけた県内の上映館も、中高年のお客さんや子供連れの女性客でずいぶん賑…

『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々』

「今にあなたがここに立つわ」。 ゾフィー・ショルは、反ヒトラーを喧伝するビラを大学構内に撒いた罪で実兄らとともに逮捕、拘束される。彼らはゲシュタポによる取調べの後、法廷で裁きを受けることになるが、裁判は法的に適正な手続きを踏むと見せかける茶…

『三年身籠る』

タイトルどおり、主人公の中島知子が三年間身ごもる映画。 三年間も胎児が出産せず母体の中にとどまり続けるというのは、ある意味ホラー映画のようでもあり、コメディ映画のようでもあり、ファンタジー映画のようでもある。とにかく不思議な味わいの映画。 …

『ある子供』

ジェレミー・レニエ扮する主人公のブリュノは、なりは大人でもやることなすことすべてが子供っぽい。恋人のアパートを無断でまた貸しする、恋人との間に生まれた赤ん坊を無頓着にも売り飛ばす、路上で通行人に金銭を無心する、少年の仲間とつるんで盗品を売…

『ブロークバック・マウンテン』

第二次大戦の終結直後に『山河遙かなり』『赤い河』で華々しくデビューし、『陽のあたる場所』『地上より永遠に』が公開された五〇年代前半には日本でも人気絶頂だったモンゴメリー・クリフト。彼は実は、知る人ぞ知る同性愛者(正しくはバイセクシュアル)…

『コーヒー&シガレッツ』

世間が煙草に対して今ほど不寛容ではなかった頃、煙草はクールでタフな男のダンディズムを演出する映画的小道具として多用されていた。四十年代の映画に出てくるハンフリー・ボガートやエドワード・G・ロビンスン、七十年代のジャック・ニコルスンなど、煙…

『お伊勢参り』

まず、保存状態の良さに驚いた。昭和二十八年の短編映画がこれだけの状態で保存されているのは奇跡に近い。五十年以上も前の地方の様子が記録された映像は大変貴重。 クレジットに「製作 三重県」とあった。つまり役所のPR映画。それにしては、御殿場海岸…

『運命を分けたザイル』

東京のテアトルタイムズスクエアで『運命を分けたザイル』。同じ日、早稲田松竹では見逃していた『クリクリのいた夏』『ピエロの赤い鼻』の2本立てをやっていたけれど、こちらは時間の都合で諦めた。 新田次郎の山岳小説をこよなく愛し、山登りに凝っていた…

『列車に乗った男』

いつの頃からか、未来について語ることをやめ、過去を振り返ることが多くなった。それは多分、残された時間よりもはるかに多くの時間を生きてしまった、ということを実感しはじめた頃からだろうか。 映画の冒頭、印象的な場面があった。初老の銀行強盗(ジョ…