『椿三十郎』
ないものねだりをしても仕方がないが、織田裕二に三船敏郎の豪胆さはやはり表現できない。また、殺陣場面もヨリ(接写)が多いためにアクションが全体的に窮屈な感じ。つまりダイナミックさにいささか欠ける。ただし日本映画史上に名高い最後の対決場面は、誰もがよく知っている以上、オリジナルとの違いを出す必要があったのだろう、工夫は施してある(未見の方はお楽しみ)。
菊島隆三、小国英雄、黒澤明が練りに練ったオリジナル脚本はもちろん面白いのだけれども、たとえば『酔いどれ天使』『野良犬』の志村喬と三船敏郎、『七人の侍』の志村喬と木村功、『椿三十郎』『赤ひげ』の三船敏郎と加山雄三というように、経験豊かな先輩が未熟な若者を導いてゆく黒澤映画独特のパターンが、年配に対する敬意などカケラもないこのご時勢にはまったく相容れないものなので、松山ケンイチら若侍の行動が、オリジナルと変わらないのにもかかわらず、いささかコッケイに感じられるのが難点。名台本も時の移ろいには勝てない?
黒澤明と森田芳光の作風は、ビフテキとオムライスほどの違いがある。違いがあるだけに逆に楽しみだったのだが・・・・。
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