『歓喜の歌』

明らかに『フラガール』の二匹目のドジョウを狙った企画。主婦のコーラスグループを主人公に据えた日常ドラマは、一見地味で意表をついた感じに思えるが、実は計算づく。
クレジットを読むと、首都圏のママさんコーラスが多数エキストラ出演しているけれども、主婦の口コミ力は相当なものだから、ネズミ講式に動員が膨らむと踏んだシネカノンの商魂はしたたかである。結果的に『フラガール』ほどのヒットにはならなかったらしいが、それでもおよそ映画の主人公にはなりえない主婦の生活ドラマとしては異例の好成績をたたき出したに違いない。
内容的には、二つのコーラス・グループをダブル・ブッキングするために市民ホールを改修してしまうという少々乱暴な飛躍があったり、ダブル・ブッキングに至る経過がいまひとつあっさりしている点や、日時の経過がよく整理されていないことなど、シナリオ上の弱点が多々あり、そうした弱点をカバーするほどの勢いはないので、★ひとつ減点せざるを得なかった。
小林薫はあいかわらず巧い。