『胡同の理髪師』

めざましい経済発展で成金が増えたせいなのか、近年の中国映画にはどうも高慢ちきで傲慢な考え方をするものが多く、あまり好きになれないが、本作は年老いた理髪師と路地裏の住人たちの生活点描に枯れた味わいがあって、とても好感が持てる。貧しい年金生活者の老人がアパートから追い立てをくらう『ウンベルトD』(ヴィットリオ・デ・シーカ監督)などをちょっと思い出させる。老理髪師もついに大往生?と思わせて最後まで死なないのが大いに結構。晩年の笠智衆さんを主役に日本でもこういう映画があったら良かったのに。