『酔っぱらった馬の時間』

弛緩しきった日常に身を浸している者にアタマから冷や水を浴びせかける厳しい映画。
大人たちが勝手に引いた国境線に子供たちが翻弄される映画に『白い国境線』という古い映画があった。同じ村に住む子供たちが、ある日を境に、突然大人の論理によって引き裂かれる悲劇を描いた作品だったけれど、子供たちが日々の糧を得るために苛酷な労働に駆り立てられるという点では、『酔っぱらった馬の時間』のリアリズムは、どちらかと言えば『靴みがき』を思い起こさせ、『白い国境線』より遙かに胸に突き刺さるものがある。
子供は大人よりも生きてきた時間の長さが圧倒的に短く、経験をもとに演技するということが難しいはず。だから、五人の子供たちの演技が、とても演技には見えないほどリアルだったのは、きっと日常と映画の境目が限りなく小さかったからだろう。あるいは、映画は日常の再現に過ぎなかったということかも知れない。
ともあれ、子供たちが“子役”ではなく、確実に息づいている映画は感動的。

靴みがき [DVD]

靴みがき [DVD]