『遙かなるクルディスタン』

アラビアのロレンス』から『ミッドナイト・エクスプレス』に至る映画的記憶の中で、ワタシにとってトルコという国はどうも“あぶない”ところ、それも倒錯的な危険がいっぱいという印象が強い(これを“映画的偏見”とでも呼ぶのか? 本当のところは何も知りません。ゴメンナサイ)。たしかに欧米側から描いたトルコ像は一方的で偏見に満ちたものだけれど、少なくともこの二作がトルコへの外側からのイメージを代表しているように思う。
『遙かなるクルディスタン』は、そんな外側からの印象よりも、この国が想像以上に複雑で困難な問題を抱えているらしいことを教えてくれる。おそらくビデオによる隠し撮りらしい戦車部隊の映像が、その緊張をよく伝えていた。
予告篇を見た限りではもっと生々しい映画かと想像していたら、後半は友の亡骸を故郷へ送り届ける静かな旅の映画になっていた。そこが素晴らしいと思う。次々と展開していく、今まで目にしたことのない美しい風景が、この映画をロードムービーの静かな傑作に仕立て上げていた。