『深呼吸の必要』

タイトルに惹かれて見に行った。
本土から沖縄にやってきた七人の若者たちが、日給五千円でサトウキビの収穫作業に従事する。ただそれだけを描く映画。
七時起床。朝食を摂ってサトウキビ畑に行き、収穫作業。日が落ちると雇われ先の農家に帰宅。そして晩御飯。あとは眠る。いい若い者がはるばる農作業のアルバイトをしに来ているのだから、それぞれに事情があるはず。が、映画はよけいな説明をほとんどしようとしない。そこが良い。何人かの素性は明かされるけれど、何も説明しない方が良かったくらい。
サトウキビの収穫作業が丁寧に描かれる。台詞が少なく単調な動作の繰り返しだけに、こういうところで監督(篠原哲雄)の力量が試される。しかし、動作がきちんと描き込まれているので、二時間の間、まったく飽きることがなかった。いつも画面に風が吹いていて、労働で汗の滲んだ首筋を涼しい風が吹き抜けていく爽快感がとてもよく出ていた。
七人を迎え入れる老夫婦の、いつも変わらない包容力が碧い海のように素晴らしい。「このままだと(納期に)間に合わない」の言葉を聞いた無口な女子高生(長澤まさみ)が、翌朝早くひとりでサトウキビ刈りをしている姿には、目頭が熱くなってしまった。
映画はやはり無口なヤツに限る。