ジェリー・ゴールドスミス逝く

三十年代のLA。元警官で今は私立探偵をやっているジェイク・ギテス(ジャック・ニコルソン)のオフィスを上品な中年の女性が訪れ、夫の素行調査を依頼する。ジェイクはさっそく依頼人の夫を尾行、愛人らしい若い娘と一緒の現場を写真に収める。その証拠写真がジェイクの知らぬ間に新聞にスッパ抜かれる。その日、もうひとりの女性(フェイ・ダナウェイ)が現れ、写真の男は自分の夫で、彼は市水道局の責任者であること、そしてジェイクを告訴することを告げる。事件の匂いを感じ取ったジェイクは、依頼人のない調査を始める・・・。
『チャイナタウン』(75)。先ごろBSで放映された。
レイモンド・チャンドラーあたりの探偵小説を彷彿とさせるシナリオは、まったくのオリジナル(ロバート・タウンアカデミー賞を受賞)で、たとえば『三つ数えろ』のように、ハンフリー・ボガートローレン・バコールでやったとしても全然違和感がないほど、ハードボイルドな雰囲気を見事にたたえている。監督ロマン・ポランスキー
酒と女が大好きなジェイク・ギテスは、警官時代に心に深い痛手を受けている。そのせいか世間を見る眼がクールで皮肉っぽく、ニヒルでどこか暗い影を感じさせる。演じるジャック・ニコルソンは当時まだ三十代。今よりずっと粋でスマートだった。その彼が大半のシーンでバカでかい包帯を鼻に貼り付けたまま登場し鼻声で台詞を喋るという、ひねった演出がゴキゲンで、ワタシにとって伊達男のジェイク・ギテスは、七〇年代最高のヒーローだったのだ。
どこかけだるく哀切なテーマ音楽はジェリー・ゴールドスミスのスコア。
その彼が亡くなってしまった。どちらかといえば渋いスコアを書く人で、テーマ音楽が映画からひとり歩きして大ヒットするようなタイプの作曲家ではなかった。いい意味で、フランツ・ワックスマンとかマックス・スタイナーとか、古き良き時代のハリウッド映画の音楽家たちを継承する作曲家だったと思う。
『チャイナタウン』はそんな彼の代表作のひとつ。冥福を祈りたい。

チャイナタウン 製作25周年記念版 [DVD]

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三つ数えろ [DVD] FRT-013

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