『ミリオンダラー・ベイビー』

尊敬する映画評論家のひとり、森卓也氏は本作を評して「もしマギーが男なら、ガンさばきを習う若者という西部劇のルーティン通り。」と書いていた。卓見である。が、ワタシが思い出していたのは、西部劇でもボクシング映画でもない、『イースター・パレード』というミュージカル映画だった。
ダンスのパートナーに捨てられたフレッド・アステアが、場末のクラブでウェイトレス兼コーラスガールをやっているジュディ・ガーランドを、半ばやけくそで相棒に雇う。素人娘との即席デュオではうまくいくはずもなく、ショウは不評。アステアの期待に何とか応えたいガーランドはレッスンを重ね、ふたりはやがてブロードウェイで成功を収める。当時、アステア四十九歳。まだ二十代半ばだったガーランドとは父娘ほども年齢が離れていた。
ミリオンダラー・ベイビー』では、ジムに所属するボクサーのウィリーが、成功を求めてフランキーの元を去る。入れ替わるように現れたのが田舎娘のマギーで、彼女の職業は何とウェイトレス! スワンクの目元が何となくガーランドに似ていると感じるのは錯覚だろうか。
フランキーとマギーが、師弟とも父娘ともとれる関係を結んでトレーニングを積み、タイトル戦に挑むというプロットは、『イースター・パレード』と全く同じだ。
クリント・イーストウッドの趣味がうかがえるようで、面白い。

DVD>イースター・パレード (COSMIC PICTURES 97)

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