脚本家・鈴木尚之さん逝く
脚本家の鈴木尚之さんが亡くなった。
東映の企画本部在籍中に内田吐夢監督の抜擢で『宮本武蔵』の脚本に参加。『宮本武蔵』全五部作のほか、同監督の代表作のひとつ『飢餓海峡』や加藤泰監督の『沓掛時次郎・遊侠一匹』などを書いた。
内田吐夢と最晩年を共にした脚本家だけあって、十年の歳月をかけた労作『私説内田吐夢伝』(97年岩波書店)は、人間・内田吐夢を活写した傑作評伝。敗戦後も自らの意志で旧満州(中国東北部)に留まり、満映・甘粕正彦の自決をみとったという内田監督の、無骨で波瀾に満ちた人生を描いて無類に面白い。
映画の良し悪しは脚本で決まる、とも言われる。そのわりには脚本家が注目されることは少ない。せめて『私説内田吐夢伝』を再読し、脚本家・鈴木尚之氏の偉業を偲ぶことにしよう。
合掌。
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