『エミリー・ローズ』

これは拾いもの。悪魔の存在を法廷で争うというところが、いかにもアメリカ映画的で面白い。
法廷劇は伝統的にアメリカ映画が得意とするジャンルのひとつ。ビリー・ワイルダー監督の『情婦』、ポール・ニューマンがアル中の弁護士を演じる『評決』、グレン・クローズジェフ・ブリッジス共演の『白と黒のナイフ』など、面白い作品が次から次へと思い浮かぶ。辣腕の弁護士と凄腕の検事が丁々発止の論戦を展開し、有罪か無罪かの判断を訴えかける陪審員制度そのものが、きわめて映画的なスリルと興奮を生むのだろう。直接法廷を舞台にはしてないけれど、陪審員制度を題材にした『十二人の怒れる男』という傑作もある。
法廷ドラマは舞台が限定されるから、観客の興味を引っ張るためには巧みなシナリオと演出力が必要である。『エミリー・ローズ』はそのどちらも優れていた。悪魔祓い映画にはなんといっても『エクソシスト』という大ヒット作があるから、どうしても比較されてしまう。だから『エクソシスト』に対してどれだけオリジナリティを出せるかが勝負といってもいい。
エミリー・ローズ』は、悪魔祓いの儀式を法廷での証言内容として描くという新手を使っている。『エミリー・ローズ』がユニークなのは、オカルト・ホラーであると同時に裁判劇でもあるという点である。これが実話を基にしているというのだから、さらに驚き。
悪魔に取り憑かれた娘を描いた場面は、なかなか怖い。大学で娘が錯乱したり、寮で身体が硬直する場面は、照明やカメラの工夫も効果的で、思わず頭髪が逆立つ恐怖感。娘を演じたジェニファー・カーペンターが凄い演技を見せる。娘の実家である一軒屋のオープンセットも素晴らしい効果を上げている。
彼女は本当に悪魔に取り憑かれたのか、それとも何らかの精神疾患だったのか、弁護側の証人、検察側の証人の視点によっていくつもの解釈が可能である。だから陪審員も、悪魔祓いを行った神父の過失致死を認めながら量刑は免じるという、玉虫色の判決を下す。
はじめは出世のために神父の弁護を引き受けながら、徐々に悪魔の存在を信じるようになってゆく弁護士を演じたローラ・リニーもぴったりの配役。少し前ならジョディ・フォスターが演じてもおかしくない役柄だと思った。

エクソシスト ディレクターズカット版 [DVD]

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