『三年身籠る』

タイトルどおり、主人公の中島知子が三年間身ごもる映画。
三年間も胎児が出産せず母体の中にとどまり続けるというのは、ある意味ホラー映画のようでもあり、コメディ映画のようでもあり、ファンタジー映画のようでもある。とにかく不思議な味わいの映画。
妊婦が主人公の映画としてはロマン・ポランスキーの『ローズマリーの赤ちゃん』以来の印象に残る映画。
ワタシは男だから分からないけれど、懐妊した女性はおよそ十ヶ月の間、期待や不安や日々大きくなるお腹を抱えながら不思議な感覚にとらわれるのだろう。この映画は、そんな女性の心理の機微にインスパイアされたであろう新しい感覚の映画。
監督は『さゞなみ』で松坂慶子と共演し、強い印象を残した唯野未歩子さん。異能の誕生である。
中島知子がテレビとはまったく違った印象で、美しい妊婦を好演。夫役の西島秀俊は相変わらず巧い。なかなか子供が生まれないので「父親は宇宙人じゃないか」などと口走ったり、『犬猫』や『帰郷』で見せた、ある部分子供のような夫を好演する。

ローズマリーの赤ちゃん [DVD]

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