『ダ・ヴィンチ・コード』

公開から七週目に入った『ダ・ヴィンチ・コード』をようやく見た。不入りで続映が危うい作品から優先的に見ていくことにしているため、大ヒット作はどうしても後回しになってしまう。
映画を見たあとすぐに原作(角川文庫版)も読んだ。結論から言えば、映画『ダ・ヴィンチ・コード』は思いのほかよく出来た娯楽映画で、原作の骨格部分をかなり忠実に映画化していると言える。賛否両論があって、プレミア試写でも失笑を買った、というような評判も聞くけれど、目くじら立てることはない。たかが映画、楽しめばよい。
トム・ハンクスのロバート・ラングトン教授、オドレイ・トトゥのソフィー・ヌヴーも違和感がなかったし、ファーシュ警部は、原作者がジャン・レノをモデルに書いたと言うだけあってまさにぴったりのイメージ。イアン・マッケランは原作に描かれているティービングとは体格など違う点もあるのだけれど、さすがに巧いと思った。
原作を読み終えて思ったことがひとつ。イエスマグダラのマリアをめぐるこのミステリー、描かれていることのほとんどすべては、たった一夜の間の出来事である。長編でありながら時間の省略というものがほとんど、ない。これはノンストップサスペンスとして絶好の素材。展開がすこぶる映画的。
突然事件に遭遇した男が犯人の嫌疑を掛けられ、警察や秘密組織の追跡をかわしながら、美女に導かれて事件の真相に辿り着く、という『ダ・ヴィンチ・コード』のプロット自体が、かのヒッチコックの“巻き込まれ型サスペンス”(『北北西に進路を取れ』や『逃走迷路』が代表的)そのもの。
原作者のダン・ブラウン、実は相当なヒッチコック・ファンではないかという気がする。

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