『プルートで朝食を』

映画ファンなら、アイルランドといえばジョン・フォードの『静かなる男』。スティーヴン・スピルバーグが『E.T.』に引用し、クリント・イーストウッドが『ミリオンダラー・ベイビー』でオマージュを捧げた作品。映画人に最も愛された“映画の中の映画”の一本。
その『静かなる男』のオリジナル・スコア(ヴィクター・ヤング作曲)が『プルートで朝食を』に使われていた。ニール・ジョーダンの、映画好きへの、なんと心憎い目くばせだろう。もうそれだけでこの映画は完璧にOKである。
にもかかわらず、そのことに触れた解説や映画批評は、ワタシの知る範囲では皆無だった。パンフレットにすら書かれていない(パンフレットに執筆しているのは音楽評論家の湯川れい子ほか。評論家の基礎学力が明らかに落ちている!)。
瞼の母”をたずねて北アイルランドからロンドンへと旅するパトリック(キリアン・マーフィーがキュート!)の波乱万丈の冒険譚が実に面白く、彼(彼女?)のキュートな表情を二時間も眺め続けているとついつい感情移入してしまって、「頑張れよ!」と声を掛けたくなってしまった。

静かなる男 [DVD]

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