『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』
“孝行したいときに親はなし”という。いつか世に出ることを期待されながら親の期待を裏切り続け、どうにかこうにか格好がついた頃、すでに親はこの世にいない。
誰しも一度は襲われるであろうそんな悔恨の念を、ある種普遍的な家族の物語としてつむぎだしたところに『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』大ヒットの理由があるのだろう。
炭鉱の町から上京したオダギリジョーが自堕落な学生生活を送ったもののなんとか東京で成功を収め、故郷から年老いた母を呼び寄せて彼女の最期を看取る、という物語の中に、観客たちは自らのそれぞれの“オカンとボクと、時々、オトン”を見る。
『ALWAYS三丁目の夕日』で希望に満ちたまなざしで仰ぎ見られた東京タワーは、本作では、観客たちそれぞれの、親に対する悔恨の象徴である。小津安二郎が『一人息子』や『東京物語』などで描いてきた、親の期待を心ならずも裏切り続ける子供たちの物語は、まさに今も昔も変わらない。
『秋日和』『変態家族 兄貴の嫁さん』『20世紀ノスタルジア』などと並んで、東京タワーが印象に残る佳作がまたひとつ生まれた。
樹木希林が名演、今年度の各賞受賞は間違いなし。小林薫もあいかわらず素晴らしい。松岡錠司の抑えた演出もお見事でした。
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