『イノセント(無修正版ニューマスター)』

1979年の日本初公開時以来二十八年ぶりに映画館で再見。
ジャンカルロ・ジャンニーニ演じるトゥリオ伯爵は、ジェニファー・オニールと長く愛人関係にありながら、妻(ラウラ・アントネッリ)が若い作家と一時的な過ちを犯したことが許せない身勝手な男である。
フェンシングのあとでシャワーを浴びる若い作家の裸体をまじまじと見つめる伯爵の表情には、自分の妻を悦ばせた男に対する憎悪と嫉妬がむき出しになってあふれ出す。伯爵の眼前、自分の妻を猛り狂わせたモノがぶらぶらと揺れている(ここが無修正版を見ることの大きな意義!)のだから、伯爵の形相たるやまったくもって凄まじい。
嫉妬にかられた伯爵は、押し殺すような声でささやきながら妻の衣服を剥がし、ピンク色に染まったその裸身を執拗に撫でまわしてゆく。
ルキノ・ヴィスコンティの、死に瀕してもなお萎えることのない、若さと強さへの嫉妬と憧憬がないまぜになった極めつけの傑作にして、遺作。
ラウラ・アントネッリは本作に数年先立つ『青い体験』ですっかりお気に入りになった女優。もともと西ドイツのポルノ女優だったそうだが、そのような女優をヴィスコンティがなぜ起用したのか、本作を見れば納得。
なお、初公開時、個人的にはその年のベスト・ワンに選んだ作品。

イノセント 無修正版 デジタル・ニューマスター [DVD]

イノセント 無修正版 デジタル・ニューマスター [DVD]