『オール・ザ・キングスメン』

"All the King's Men"という映画の存在を初めて知ったのはもう四十年近くも前のこと。確か当時邦題は『すべて王の家来』と直訳されていたけれども、実在の政治家をモデルにしたロバート・P・ウォーレンのピューリッツァ賞受賞小説の最初の映画化であるこの作品、アカデミー賞の作品賞、主演男優賞、助演女優賞を受賞しているにもかかわらず、日本では終戦直後の民主化政策上好ましくないとの理由で長い間未公開になっていた(その後、製作から三十年近くも経った1976年になって公開)。
今回の『オール・ザ・キングスメン』はその再映画化で、あらすじは一作目をほぼ忠実に踏襲。ただし、ショーン・ペン扮する政治家の独裁的な個性を描く方法として、アジテーション場面をイメージ的に繰り返すばかりで、肝心の政治汚職にまつわるドラマがきちんと描ききれていないので、むやみに長いだけの退屈な映画になってしまった(ちなみに最初の映画化作品は本作より30分も短い110分のコンパクトさ)。明らかに『シンドラーのリスト』の脚本家でもあるスティーヴン・ゼイリアンの監督としての力量不足と思われる。描き方によっては悪徳政治家は魅力的な人物像になりうるだけに、惜しい。
ショーン・ペンジュード・ロウケイト・ウィンスレットアンソニー・ホプキンスなどいい役者を使いながら、いかにも宝の持ち腐れと言わざるを得ない。

オール・ザ・キングスメン [DVD] FRT-027

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