『街のあかり』

己の表現力の未熟さを露呈しているとしか思えない冗長な作品が横行する昨今、上映時間七十八分という短さが潔い『街のあかり』。
マフィアの情婦に騙された孤独な男、彼を思い続ける屋台の女、路上の少年と哀れな犬という、いつかどこかで見た安手の犯罪映画まがいの陳腐なラヴ・ストーリーの姿を借りつつ、台詞・表情・動作から大道具・小道具、風景に至るまで、禁欲的なまでに不純物を削ぎ落とした画づくりと演出は、どこか小津安二郎の晩年の諸作を思い起こさせる。
閑散とした風景、寒々とした部屋、互いに疎外された人間関係などを描きながら、『犬の生活』『キッド』『モダンタイムス』などチャップリンの諸作を思い起こさせるあたり、ストイックでありながら、人間的すぎる温もりを感じさせるアキ・カウリスマキの独壇場である。

街の灯 コレクターズ・エディション [DVD]

街の灯 コレクターズ・エディション [DVD]

キッド・コレクターズ・エディション [DVD]

キッド・コレクターズ・エディション [DVD]

犬の生活/担え銃/偽牧師 [VHS]

犬の生活/担え銃/偽牧師 [VHS]