『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』

黒澤明の『用心棒』、そのパクリであるセルジオ・レオーネの『荒野の用心棒』など、マカロニ・ウエスタンのテイストをベースに、サム・ライミの『クイック＆デッド』やジョン・ヒューストンの『ロイ・ビーン』、サム・ペキンパーの『ワイルド・バンチ』あたりまでごった煮にした、てんこ盛りの脂っこいサービス･ランチのような映画。
配役も伊藤英明、伊勢谷友介、安藤政信、佐藤浩市、石橋貴明、石橋蓮司、堺雅人、小栗旬、香川照之、木村佳乃、桃井かおり、松重豊、そしてクエンティン・タランティーノという豪華布陣。赤と白を基調にしたケバケバしい美術やオープン・セットも大きな見どころ。
これだけ揃えば面白くないはずはない、と手放しで賞賛したいところだけれども、三池崇史の演出は少々ワルノリ気味で幾らか空回り。アクション、ガンファイト、ギャグやお笑い、お色気のどれひとつをとっても切れ味はイマイチで、大味な印象。ただし、タランティーノがスキヤキについての薀蓄をたれる場面はなかなか笑わせるし、こんな意味のない映画を大真面目で撮ったＢ級活劇精神は大いに評価に値する。
いずれにしても、三池にとってウエスタンとは、ジョン・フォードの『荒野の決闘』『捜索者』やハワード・ホークスの『赤い河』『リオ・ブラボー』、股旅西部劇の傑作『シェーン』などの本場ハリウッド製ではなく、イタリア製の方なのだというあたりが、世代を感じさせるなア。
ちなみに、日本人が日本を舞台に全篇英語の台詞で通す西部劇という発想は、案外『ラストサムライ』に触発されたものではないか。このアイデア、前代未聞と言いたいが、三船敏郎がチャールズ・ブロンソン、アラン・ドロンと共演した『レッド・サン』の例も、すでに三十年以上前にある。

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