『再会の街で』

ジェリー・シャッツバーグ監督、ジーン・ハックマンアル・パチーノ主演の『スケアクロウ』を、9.11同時多発テロの後遺症に苦しむ現代のニューヨークに置き換えたかのような秀作。
スケアクロウ』では、刑期を終えたハックマンと船乗りで何年も家を空けているパチーノが街道で出会う。ハックマンはピッツバーグへ向かう途中妹を訪ねるところ。パチーノはデトロイトにいる妻のもとに向かう途中である。ハックマンのタバコに、パチーノが最後の一本のマッチで火をつけてやったことから二人は意気投合。一緒に旅をする。
デトロイトに着いたところでパチーノは妻に連絡するが、妻はすでに再婚。子供も死んだと告げられる。ショックのあまりパチーノは頭がヘンになる。ハックマンは店を開くつもりで蓄えていたなけなしのカネをパチーノの治療に使うことにする・・・・という二人の男の友情を描くロードムーヴィー。七十年代、アメリカン・ニューシネマの時代を代表する一本。
アメリカン・ニューシネマの諸作には、当時泥沼化していたヴェトナム戦争の影が落ちている。『真夜中のカーボーイ』『イージー・ライダー』『帰郷』『タクシー・ドライバー』『ディア・ハンター』など、どれもそうである。
同じように現代のアメリカ映画には、9.11やテロによる被害や後遺症を語る作品が多い。『再会の街で』もその一本に数えられるけれども、本作の大きな特徴は、映画のつくりが何となく七十年代風なところで、特に音楽の使い方がそうである。説明するのは難しいが、たとえば七十年代の映画をビデオで百本くらい見てもらえば分かってもらえるのではないか。ちなみに、映画中に引用されているメル・ブルックスの『ヤング・フランケンシュタイン』や『ブレージング・サドル』も七十年代の作品。
アダム・サンドラーが非常に素晴らしいが、彼の演技や風貌は明らかに七十年代のスターであるアル・パチーノを意識している。メイクもいかにもボブ・ディラン風。
余談だけれども、フレッド・アステアリタ・ヘイワースが“I'm Old Fashioned”を踊る『晴れて今宵は』も引用されているところを見ると、マイク・バインダー監督、どうも古い映画がお好きなようで。だからか映画のつくりが実に丁寧で、最後まで飽きることなく見られた。

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