『人のセックスを笑うな』

センス抜群だった『犬猫』で大いに気に入った井口奈巳監督。彼女の新作ということで期待していたのだけれど、ガックリ。
突然炎のごとく』のジャンヌ・モローを思わせるような、つかみどころのない永作博美と、彼女に翻弄される初心な松山ケンイチ、それに蒼井優を交えた三角関係は、いつかどこかで見たいくつかの映画を思わせるが、やたらに長いワンシーン・ワンショットに工夫がなく、台詞も聞き取りにくいので、二時間を超える長尺の上映時間が大変苦痛。イライラさせられる。こんな題材はもっと短く軽やかに、せいぜい百分程度にまとめなければいけない。
以前、『犬猫』について“一本なら誰でも傑作が撮れる”というような意味の批評を目にしたことがあって、その意見には少々反撥したのだけれど、不幸にしてくだんの皮肉な評価が的中してしまったカタチ。ただし、女性層を中心にヒット(その理由は中年のオッサンにもなんとなく察しがつく。)したそうだから、次回作のオファーはあるでしょう。そのときどんな映画を撮るのか、きっと井口監督の真価が問われる。頑張って頂戴!