小津安二郎

煙突はどこへ?

三重県伊勢市にある旧制宇治山田中学(現宇治山田高校)跡地。ここに、ついこのあいだまで一本の古い煙突が建っていた。この煙突は、映画監督小津安二郎が宇治山田中学在学中に寄宿していた寮の一部で、当時の建造物の中では唯一現存する遺構だったのだ。し…

『珈琲時光』

鬼子母神前(雑司ヶ谷あたり)から鉄道を使って神田神保町の古書店街へ出かけるにはいくつかのルートがある。ひとつは、都電荒川線の東池袋で地下鉄有楽町線に乗り換え、飯田橋でさらに総武線に乗り継いで御茶の水に至るルート。ふたつ目は、都電荒川線で大…

『さゞなみ』

『さゞなみ』には、小津映画の痕跡がいくつも見て取れる。 母と娘の物語が『秋日和』を思わせることはアチコチに書かれているようだから、それ以外の細部を拾っていくと・・・・ まず、母娘が旅先の川原で撮った記念写真。小津の映画で記念写真が撮られると…

『麦秋』

一家の老父(菅井一郎)が小鳥の餌を買いに家を出る。踏切の前まで来ると遮断機が下り、老父は道端に腰を降ろす。電車が通り過ぎる。遮断機があがる。老父は腰掛けたまま吐息をつき、空を見る。彼の顔には笑みが浮かんでいる。 『麦秋』の終盤に現れる謎めい…