『天空の城ラピュタ』

地上波で放送されたのを久しぶりに見た。何度見てもワクワクする。宮崎駿の長編ではやっぱりこれが一番面白い。興奮させられる。これに比べると最近の作品はどうも観念的になりすぎてやしませんか?
初めて見たときから思っていたいくつかの印象。整理してみると・・・・。
まず、本作の舞台となる峡谷の炭鉱町が、ジョン・フォードの名作『わが谷は緑なりき』の舞台になったウェールズの炭鉱町を何となく思い起こさせること。案の定、原作・脚本・監督の宮崎駿は本作の製作前にウェールズを二週間ほど旅している(宿で酒ばかり飲んでいたそうだが・・・・)とか。
その『わが谷は緑なりき』に主人公一家の娘役で出ているのがモーリン・オハラという女優。彼女は“テクニカラー女優”と呼ばれるほど美しい赤毛の持ち主だった。『天空の城ラピュタ』の主人公であるパズーの親方のおかみさんも、まるでモーリン・オハラのような美しい赤毛をしているのは果たして偶然か?
その名が示すとおりアイルランド系であるモーリン・オハラは、同じくアイルランド系移民の子孫であるジョン・フォード映画の常連。フォードが故郷に帰って撮った『静かなる男』では、ジョン・ウェインと恋に堕ちる村娘の役を演じているが、ウェインとの結婚を承知しない彼女の兄(ヴィクター・マクラグレン)とウェインが延々殴り合う場面が『天空の城ラピュタ』の前半に再現されている。海賊ドーラの息子とパズーの親方の殴り合いである。友情の始まりともいえるそのおおらかさは、まさにフォード映画のタッチ。
シータとパズーがたどりつく空中都市のラピュタ。飛行石の力によって天空から全世界を支配したと思われたラピュタも、実はその中心部に巨大な樹木が根を張っている。『となりのトトロ』の鎮守の森を挙げるまでもなく、宮崎駿の映画を貫くのは、巨大な樹木のイメージ。その記憶の根源に横たわるのは、『わが谷は緑なりき』でウォルター・ピジョンとロディ・マクダウェルが語り合ったウェールズの炭鉱町の巨木だと、ワタシは信じて疑わない。

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