日本映画専門ch.

『運命じゃない人』

たった一夜の間に起こった出来事を、複数の登場人物それぞれの視点から、時制を行きつ戻りつ語るという技巧的な作品でありながら、婚約者に裏切られた女性とお人好しの青年の出会いをなかなか情感豊かに描いた秀作。 手法としては、近年ではクエンティン・タ…

『まぶだち』

最近の日本映画は学園モノがとても多い。脚本家、監督をはじめとした製作者側の社会人としての経験の乏しさ(学校と業界しか知らない?)ゆえか、あるいは日本には表現するに値する世界が学校以外に見当たらないのか、そのあたりはよく判らないが、日本映画…

『かあちゃん』

当地では公開されなかった旧作。今回日本映画専門チャンネルで放送されたのを初めて見た。 天保年間、江戸下町の長屋にドケチな一家が住んでいた。“かあちゃん”こと、おかつ(岸恵子)と三人の息子、それに娘の五人家族である。一家は毎月の月初めと十四日、…

『サラリーマン忠臣蔵』

忠臣蔵を高度経済成長期のサラリーマンものに翻案した、東宝“社長シリーズ”の一篇。赤穂物産の若社長を池辺良、彼を死に追いやり赤穂物産を牛耳る銀行家・吉良に東野英治郎、吉良に復讐する赤穂物産専務に森繁久弥という布陣。 主君(社長)に忠誠を誓う家臣…

『なつかしの顔』

映画法によるシナリオの事前検閲やフィルムの配給制など戦時下の厳しい情勢の中で製作されながらも、成瀬巳喜男の演出家としての才能が光る秀作。 昭和十六年のある農村。模型飛行機遊びに興じる少年たち。その中に本作の主人公である弘二。彼の家は兄が出征…

『らくがき黒板』

日本映画専門チャンネルで連続放映中の新藤兼人監督、昭和三十四年の作品。 広島県三原市。晴れた朝の通学風景。大勢の小学生たちが元気に町を駆けていく。その中に、あちこち落書きしては走り去る男の子のグループ。家の塀、地蔵の顔、トラックのドア・・・・ど…

『原爆の子』

日本映画専門チャンネルがHD化されたのを機に加入。ちょうど連続放映中の新藤兼人監督作品を取り上げることにした。昭和二十七年作品。 瀬戸内海の島で教師をやっている乙羽信子が、久しぶりで夏休みを利用して故郷の広島に帰る。彼女は、原爆で灰燼に帰し…