☆☆☆★★

『真珠の耳飾りの少女』

映画に登場する肖像画はどうも亡霊と結びつくことが多い。たとえばヒッチコックの『レベッカ』や『めまい』。主人公は、肖像画に描かれた女性の霊や呪いにさいなまれるという設定。肖像画そのものが、亡くなった妻や恋人といった最愛の人物の面影をとどめよ…

『フリーダ』

名古屋市美術館で開かれている「フリーダ・カーロとその時代」展と、進富座で上映中の『フリーダ』を続けて楽しんだ。 家人が、フリーダ・カーロをはじめて日本に紹介した本(『フリーダ・カーロ/生涯と芸術』晶文社)の翻訳者の教え子という事情もあって、…

『ティファニーで朝食を』

高校生の頃にリヴァイバルで見て以来三十数年ぶり。 ワケあって同居していた八歳年上の従兄の影響で小学生の時分から洋楽ばかりを聴いていた。TV『シャボン玉ホリデー』のエンディング・テーマにも使われていた“スターダスト”は大のお気に入りで、意味も分…

『エルミタージュ幻想』

全編ワンカットの映像それ自体は、ステディカムとハイビジョン・カメラという技術的達成をもってすれば、それほど驚くにはあたらない。ムービーカメラを手にしたことのある人間なら、誰でも一度は夢に見る映画的冒険のひとつにすぎない。だからことさら全編…

『過去のない男』

男が列車の食堂車でスシを食べ日本酒を飲もうとする場面に流れるのは、なんとクレイジー・ケン・バンドによる「ハワイの夜」という日本語の歌! これが意外に違和感を感じさせないから不思議。パゾリーニが雅楽を使ったときのような衝撃的な感じではなく、む…

『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』

遅ればせながらカミさんと『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』を見に行ったら、進富座で倅とばったり。しかも、楽日が近いせいか、観客はわれわれ一家三人のみ。 一家貸し切りで見る『ロード・オブ・ザ・リング』はなかなかのものだった。 日本版の実写で…

『マーサの幸せレシピ』

母親を亡くし拒食症に陥っていた少女がパスタを頬張るショット。短く、さりげないショットだったけれど、目頭が熱くなった。 全編の大半がレストランの厨房を舞台にしていて、涎の出そうなメニューが次から次へと登場するというのに、何よりも美味そうに見え…