2006-01-01から1年間の記事一覧

『ラフ』

昨今の日本映画の好調ぶりをうかがわせる映画。こういう何でもないアイドル映画がさりげなくコンスタントに出てくるようになれば、日本映画界も強いと思う。日本映画の伝統的な強さは、構えがそれほど大げさでない、いわば番線映画的な作品の中にある。かく…

『間宮兄弟』

『かもめ食堂』同様、主人公の兄弟(佐々木蔵之介、ドランクドラゴンの塚地武雅)の、ある意味とても現代人ばなれした謙虚で慎ましい生活ぶりが共感を呼ぶ。終始画面に溢れているふたりと彼らの母親(中島みゆき)の微笑みを眺めていると、観客のこちら側ま…

『かもめ食堂』

本作の魅力は、何とも言えないゆるやかな時間の流れ。急がない、あくせくしない、質素な生活を楽しむ、という小林聡美、もたいまさこ、片桐はいりらの生き方が観客の心をがっちり掴んだ。こんな生き方が今の日本人には何よりも必要、ということをズバリ提言…

『雪に願うこと』

何よりもがっちり作られた映画である点を評価したい。根岸吉太郎ももはやベテラン。腰を据えた演出振りが頼もしい。厩舎で男たちの身の回りの世話を焼く小泉今日子の存在感が光る。伊勢谷友介は『嫌われ松子の一生』に続く好演。

『日本沈没』

今秋公開される『日本以外全部沈没』には期待している。そこでまず本編を見ておくことに。オリジナルを見ておかないとパロディは楽しめませんからね。それにしても、柴咲コウはこんな誰でも構わない役など蹴って『嫌われ松子の一生』に出るべきだった。つく…

朝夕秋めいてきた。 久々の日記。あまりの暑苦しさに、ついつい更新をサボってしまいました。 まめに更新していらっしゃる御仁には敬服いたします。 今夜は今夏に見た映画の感想など、まとめて・・・・。

続・映画検定受検始末

キネ旬主催「映画検定」の2級に合格。通知を受け取った。 合格通知なるものを頂戴するのは、会社の採用試験を受けて以来実に二十七年ぶり! 気恥ずかしいような・・・、けれど正直嬉しい。ホッとした。 通知によれば合格基準は正答率70%以上。次回の1級受検…

『佐賀のがばいばあちゃん』

ヒットしている。四月下旬に13スクリーンでスタート。地元の九州で火がついて、六月上旬時点で74スクリーンにまで拡大されているらしい(キネ旬“BOX OFFICE REPORT”)。ワタシが見に出かけた県内の上映館も、中高年のお客さんや子供連れの女性客でずいぶん賑…

ジューン・アリスン逝く

ジューン・アリスンが亡くなった。 実在の野球選手モンティ・ストラットンの伝記映画『甦える熱球』、そして『グレン・ミラー物語』の両作で演じた主人公(ともにジェームズ・スチュワート)の妻役が、何と言っても印象深い。 彼女には“内助の功”とか“良妻賢…

『ダ・ヴィンチ・コード』

公開から七週目に入った『ダ・ヴィンチ・コード』をようやく見た。不入りで続映が危うい作品から優先的に見ていくことにしているため、大ヒット作はどうしても後回しになってしまう。 映画を見たあとすぐに原作(角川文庫版)も読んだ。結論から言えば、映画…

映画検定受検始末

先月最後の日曜日、キネマ旬報社主催の映画検定(2級)を受検。 その検定の模範解答がキネ旬7月下旬号に掲載されていた。さっそく自己採点したところ、60問中6問が誤答。正答率は90%と判明。 (誤答のうち3問が映画祭がらみの問題。データベース的な知…

『グッドナイト&グッドラック』

『グッドナイト&グッドラック』は、まさに“硬派”と呼ぶに相応しい社会派ドラマの秀作。 全編を貫くハードなタッチ、フィルム・ノワールにも通じるコントラストの強い、陰影に富んだモノクロームの映像は、四十年代後半から五十年代はじめにかけて、アメリカ…

『嫌われ松子の一生』

『エデンの東』のキャル(ジェームズ・ディーン)のように父親の愛を得られない主人公が、『西鶴一代女』の田中絹代さながらに夜鷹(最下層の街娼)まで転落していく一生を、時間軸を自在に操ってチャールズ・フォスター・ケーンの生涯を浮かび上がらせた『…

『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々』

「今にあなたがここに立つわ」。 ゾフィー・ショルは、反ヒトラーを喧伝するビラを大学構内に撒いた罪で実兄らとともに逮捕、拘束される。彼らはゲシュタポによる取調べの後、法廷で裁きを受けることになるが、裁判は法的に適正な手続きを踏むと見せかける茶…

『イノセント・ボイス 12歳の戦場』

本作の脚本家であるオスカー・トレスは、実際に十四歳のとき戦火のエルサルバドルを脱出して単身アメリカに渡り、その後俳優をめざしながら自身の経験と記憶を一本の脚本にまとめあげた。それがこの『イノセント・ボイス 12歳の戦場』のもとになったシナリオ…

『好きだ、』

九月の頃なのだろうか、いくらか湿気を含んだような風が吹き抜ける土手の向こう、低い山並みを薄い雲がゆっくりと流れてゆく。主役の女子高生・ユウ(宮崎あおい)と同級生のヨースケ(瑛太)は、放課後に土手でよく一緒に過ごす。ヨースケはいつも下手なギ…

『ホテル・ルワンダ』

ルワンダの民族紛争に関しては、一時期のジャーナリズムによるセンセーショナルな報道を覚えていたので、映画を見る前は、正直なところ少々気が重かった。「この事実を見よ」的なメッセージ映画や、論文や社説で書いてもらった方が良いような映画はどうも好…

『三年身籠る』

タイトルどおり、主人公の中島知子が三年間身ごもる映画。 三年間も胎児が出産せず母体の中にとどまり続けるというのは、ある意味ホラー映画のようでもあり、コメディ映画のようでもあり、ファンタジー映画のようでもある。とにかく不思議な味わいの映画。 …

『タイフーン』

二十年間生き別れになっていた姉(イ・ミヨン)と弟(チャン・ドンゴン)が再会する場面が泣かせる。 脱北のさなか北朝鮮に家族を皆殺しにされ、かろうじて生き残ったイ・ミヨンとチャン・ドンゴンの姉弟。しかし逃亡の果てにふたりは生き別れとなり、姉は娼…

『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』

トミー・リー・ジョーンズ監督作品『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』は豊穣な映画的記憶に満ちた作品である。 サム・ペキンパーの『ガルシアの首』を想起させる点がそこかしこで話題になっているけれど、テキサスとメキシコ国境のあたりを舞台にし…

『ヨコハマメリー』が見たい!

「・・・・敗戦国である日本の横浜には進駐軍の兵士が訪れ、・・・・米兵を相手に体を売る日本女性たちも現れた。メリーさんはそんな外娼の一人であった。やがて・・・・メリーさんも年をとり、老女になった。しかし、メリーさんは老女になっても顔に白塗りの厚化粧をほ…

『寝ずの番』が待ち遠しい!

映画『寝ずの番』(マキノ雅彦監督)の予告篇を見て思わず吹き出してしまった。 わずか数分の予告篇なのに、まったく下品でいやらしく、不謹慎な映画だということがすぐ分かった。こんなふしだらな映画、一日も早く見たい!

和田誠さんの『シネマ今昔問答・望郷篇』を読む

和田誠さんの『シネマ今昔問答・望郷篇』(新書館)がめちゃくちゃ面白い。一昨年に出た『シネマ今昔問答』のいわば続篇で、和田さんが初めて見た映画のことや、総天然色映画、3D映画、初監督作品である『麻雀放浪記』、それに『快盗ルビイ』『真夜中まで』…

『県庁の星』

県庁の職員が主人公とはめずらしい。たぶん日本映画史上はじめてでは。同じ公務員でも警察官や消防士、教師が主人公の映画は数え切れないほどある(たとえば警察官なら織田裕二主演の『踊る大捜査線』シリーズ、クリント・イーストウッドの『ダーティハリー…

『ある子供』

ジェレミー・レニエ扮する主人公のブリュノは、なりは大人でもやることなすことすべてが子供っぽい。恋人のアパートを無断でまた貸しする、恋人との間に生まれた赤ん坊を無頓着にも売り飛ばす、路上で通行人に金銭を無心する、少年の仲間とつるんで盗品を売…

『ブロークバック・マウンテン』

第二次大戦の終結直後に『山河遙かなり』『赤い河』で華々しくデビューし、『陽のあたる場所』『地上より永遠に』が公開された五〇年代前半には日本でも人気絶頂だったモンゴメリー・クリフト。彼は実は、知る人ぞ知る同性愛者(正しくはバイセクシュアル)…

『力道山』

力道山をリアルタイムで目撃しているのは現在おそらく五十歳前後よりも年配の方々。自分もそのひとりである。 今からざっと四十数年前、昭和三十年代の金曜日夜八時、近所の床屋にオジサンたちが集まって、三菱電機のネオンサインで始まるプロレス中継を見な…

『風の前奏曲』

『風の前奏曲』は、一昨年の『マッハ!』で技術的水準の高さを示したタイ映画が、その実力を改めて見せつけた一本。タイの伝統楽器、舟型の木琴“ラナート”をめぐるお話で、一種の音楽映画として第一級のエンターテインメント作品である。 若くしてラナート奏…

『フライトプラン』

脱出不可能な大型旅客機から少女が忽然と消える。機内で少女を見かけた者は誰ひとりいない。果たして少女は拉致誘拐されたのか、ならば乗客やフライングアテンダントは全員が共謀者なのか、それとも少女ははじめから存在していなかったのか・・・・ 予告篇を見た…

『エミリー・ローズ』

これは拾いもの。悪魔の存在を法廷で争うというところが、いかにもアメリカ映画的で面白い。 法廷劇は伝統的にアメリカ映画が得意とするジャンルのひとつ。ビリー・ワイルダー監督の『情婦』、ポール・ニューマンがアル中の弁護士を演じる『評決』、グレン・…