2007-01-01から1年間の記事一覧

『百年恋歌』

東京を舞台にした日本映画『珈琲時光』で往年の調子を取り戻したかにみえた侯孝賢(ホウ・シャオシエン)だけれども、『百年恋歌』では彼の良い面とそうでない面が同時に出た。 三部構成になっているオムニバスの第一話『恋愛の夢』では、兵役を目前にひかえ…

『天空の城ラピュタ』

地上波で放送されたのを久しぶりに見た。何度見てもワクワクする。宮崎駿の長編ではやっぱりこれが一番面白い。興奮させられる。これに比べると最近の作品はどうも観念的になりすぎてやしませんか? 初めて見たときから思っていたいくつかの印象。整理してみ…

『今宵、フィッツジェラルド劇場で』

ロバート・アルトマン監督の名をはじめて知ったのは『M★A★S★H マッシュ』初公開の頃。しかし、彼は劇場用映画の監督になる前、ワタシが毎週欠かさず見ていたTVシリーズ『コンバット』のローテーション監督だったことがあるので、彼との最初の出会いは実は『M…

『大列車作戦』

このところNHK-BSは面白い映画が続いている。 本作は、大昔、淀川長治大先生が解説をしておられた頃の日曜洋画劇場で見て以来。記録を調べたら一九七〇年に放送されていたので、なんと三十七年ぶりの再見ということに。 第二次大戦末期、ドイツ軍占領下のパ…

『野望の系列』

長い間見るチャンスがなかった作品。BSで深夜に放送されようやく見ることができた。 健康不安を抱える合衆国大統領のフランチョット・トーンが自らの政策継承者としてヘンリー・フォンダを国務長官に推挙する。 ところが、この人事に反対するチャールズ・ロ…

『ブリット』

高校生の冬、『シェーン』と2本立てでやっていたのを見た。もちろん『シェーン』も面白かったのだけれど、併映の本作にもとても興奮したのを覚えている。 NHK-BS/Hivisionで放送されたので、見た。 上院議員のロバート・ヴォーンは、政治的な宣伝効果を狙っ…

『黄色い涙』

いかにも普段あまり映画を見ていない評論家たちが持ち上げそうな『メゾン・ド・ヒミコ』よりも、純然たるアイドル映画の意匠を纏いながら映画的完成度においては圧倒的な高さを示した『タッチ』を断然好むワタシとしては、犬童一心監督、嵐主演の本作にとて…

『バベル』

ライフル銃から発射された弾丸が誤って人を殺傷してしまったことからドラマが始まるところが、去年公開された『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』と同じ。それもそのはず『バベル』の脚本家ギジェルモ・アリアガは『メルキアデス・エストラーダ・・・・…

『イノセント(無修正版ニューマスター)』

1979年の日本初公開時以来二十八年ぶりに映画館で再見。 ジャンカルロ・ジャンニーニ演じるトゥリオ伯爵は、ジェニファー・オニールと長く愛人関係にありながら、妻(ラウラ・アントネッリ)が若い作家と一時的な過ちを犯したことが許せない身勝手な男である…

『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』

“孝行したいときに親はなし”という。いつか世に出ることを期待されながら親の期待を裏切り続け、どうにかこうにか格好がついた頃、すでに親はこの世にいない。 誰しも一度は襲われるであろうそんな悔恨の念を、ある種普遍的な家族の物語としてつむぎだしたと…

『善き人のためのソナタ』

最近のアカデミー外国語映画賞受賞作は、テーマは立派なのだけれどもいまひとつ面白みに欠ける作品が多かった。しかし『善き人のためのソナタ』は違った。 旧東独の国家保安省に勤務する士官が反体制的な劇作家を二十四時間体制で盗聴するうち、彼の部屋にあ…

『ホリデイ』

この手の映画は、そもそも他愛もない嘘を映画的なお約束事として受け入れる余裕の精神が必要。何よりもリアリティが要求される今のご時勢では、そうしたお約束事はなかなか理解されないが・・・・。 『ホリデイ』は、1930年代なら、キャメロン・ディアス演じるキ…

『ブラッド・ダイヤモンド』

「“TIAって分かるか。“This is Africa”って意味さ」とうそぶき、いつの日かアフリカから出て行くことを夢見ているダイヤの密売人レオナルド・ディカプリオが素晴らしい。ニヒルでクールな野心家だがどこかロマンを感じさせる冒険家のにおいがする。60年も…

『ロッキー・ザ・ファイナル』

およそまる三ヶ月更新をサボりました。 これだけサボると、あらかたの読者は二度とアクセスしてこなくなるでしょう(笑)。 そこで、これを機に日誌を少々リニューアル。 徐々に長大化していた内容をなるべく簡素に、気楽に書いていくことにします。 双葉十…

アカデミー賞雑感

アカデミー賞候補が発表された。 意外だったのは『硫黄島からの手紙』が外国語映画賞ではなく作品賞の方にノミネートされたこと。 『硫黄島からの手紙』は全編ほとんどが日本語。だから、ノミネートがあるとすれば当然外国語映画賞の方だろうと思っていた。…

『それでもボクはやってない』

周防正行監督・脚本の『それでもボクはやってない』は、社会派エンターテインメントとして群を抜いた面白さ。気が早すぎるけれども、今年度、本作以上に面白い日本映画はまず出てこないと断言できる。 冤罪裁判といえば今井正監督の『真昼の暗黒』が即座に思…

『黒澤明vs.ハリウッド』

黒澤明の『トラ・トラ・トラ!』監督解任事件は、日本映画史上の謎である。当時のキネマ旬報編集長・白井佳夫氏によるルポなど、事件の真相に迫ろうとする試みがまったくなかったわけではないが、物的資料が国内にあまり残されていないことや関係者の多くが…

続・映画検定受検始末〜1級篇

キネマ旬報主催の映画検定・1級に合格。 得点は76点(満点は79点)で、トップに惜しくも1点差。 まア、我ながら上出来じゃないでしょうか。 仮にこれが国家公務員Ⅰ種試験であれば、ワタシも高級官僚への道をまっしぐら、というところなのだけれど、映画検…

美術監督・内藤昭さん逝く

内藤昭さんは大映京都撮影所の全盛時代を支えた映画美術監督。監督の池広一夫、井上昭と同期で、同じ美術監督の西岡善信さんの四年後輩にあたる。 溝口健二の『お遊さま』『近松物語』『新・平家物語』などのセット・デザインを担当後、美術監督に昇進。代表…

『酒井家のしあわせ』

監督の呉美保は、タイトルは忘れたけれど何かの映画で記録係をやっていた。 記録、つまりスクリプトの仕事は撮影されたショットの一切を記録すること。たとえば今撮影中のショットに出ている俳優がどんな衣装を着ていて、カット尻では手足の位置がどこにあっ…